岡山大学らは12月1日、ディスプレイなど広く産業利用されている液晶分子について、これまでの概念を覆す新たな計測・解析手法を用いて、液晶分子に紫外線光を当て分子が動く様子を直接観察することに成功したと発表した。

同成果は、岡山大学大学院自然科学研究科(工)の羽田真毅 助教、林靖彦 教授、京都大学大学院理学研究科の齊藤尚平 准教授、筑波大学計算科学研究センターの重田育照 教授、九州大学大学院理学研究院の恩田健 教授らの共同研究グループによるもの。詳細は米国化学会雑誌「Journal of American Chemical Society」に掲載された。



これまで、液晶分子の立体構造を決定し、その機能の元となる分子運動を理解することで、より高精度かつ広範囲な液晶材料の開発が可能になると期待されていた。しかし、液晶中の炭素鎖に埋もれた分子骨格の高速な動的挙動を直接的に構造解析する手法はまったく存在せず、液晶分子の運動を解析する新しい手法の確立が求められてきた。

共同研究グループによる、時間分解電子線回折装置と時間分解赤外分光法を組み合わせた液晶分子の構造解析と動的挙動の観察に成功した。また、光照射後1〜100ピコ秒程度の時間スケールにおいて発現する励起状態芳香族性を観測し、理論計算でその妥当性を確認できたという。

なお、今回の成果を受けて研究グループは、同手法は、光応答性・機能性の液晶分子やソフトマテリアルの構造決定を革新する測定・解析手法として応用展開が期待されるとしている。
液晶の歴史 (朝日選書)
D・ダンマー
朝日新聞出版
2011-08-10