液晶ディスプレイ(LCD)ドライバICのパッケージング・テスティング(封止・検査)大手、頎邦科技(チップボンド・テクノロジー)は14日、中国の液晶パネル最大手、京東方科技集団(BOEテクノロジーグループ)傘下の北京芯動能投資基金などに対し、チップボンド蘇州子会社の株式53.69%を売却すると発表した。売却額は1億6,600万米ドルで、来年第2四半期に取引完了予定だ。中国がドライバICを含む半導体の自給率を急速に引き上げる中、中国市場シェア首位のチップボンドは、BOEとの合弁により、BOEからの受注を確実にできる。15日付経済日報などが報じた。

 チップボンドは、頎中科技(蘇州)の株式を合肥地方政府基金に、BOE傘下の北京芯動能投資基金と北京奕斯偉科技に売却し、チップボンドの出資比率は85.54%から31.85%に下がる。売却益は6,307万5,000米ドルを見込む。



 チップボンドは同3社と合弁で、中国でドライバIC実装用COF(チップオンフィルム)基板の新会社も設立する。チップボンドの出資比率は30%で、合肥地方政府基金は40%、BOE傘下の北京芯動能投資基金、北京奕斯偉科技は計30%。新会社には、チップボンドが13年に買収したCOF基板の欣宝電子が三井金属鉱業から取得した技術と生産ラインを移管する。チップボンドが自社で研究開発(R&D)したCOF技術と生産能力は台湾に残す。

 BOEにとってチップボンドとの合弁は、垂直統合が目的とみられている。BOEは、巨大なパネル生産能力を保有しており、力晶科技(パワーチップ・テクノロジー)が合肥12インチウエハー工場でドライバICを製造し、チップボンドが後工程の封止・検査を担う形だ。チップボンドはBOEのドライバIC封止・検査を受注することで大幅な増収増益が見込める。

 台湾の半導体封止・検査業界では、南茂科技(チップモス・テクノロジーズ)が今年3月、上海子会社の宏茂微電子(上海)の株式54.98%を、中国の半導体大手、紫光集団などに売却した。矽品精密工業(SPIL)は11月に、矽品科技(蘇州)の株式の30%を、紫光集団に売却すると発表した。また、光電関連製品大手、光宝科技(ライトン・テクノロジー)も今週、SSD(ソリッドステートドライブ)子会社の蘇州光建存儲が紫光集団から55%の出資を受け入れると発表している。

 中国政府は2014年6月に半導体産業育成戦略「国家集成電路産業発展推進綱要」を発表し、半導体の自給率を20年に40%、25年に75%まで引き上げる目標を掲げており、大きな半導体商機が創出される見通しだ。 

 台湾では15年にSPIL、力成科技(パワーテック・テクノロジー)、チップモスが紫光集団からの出資受け入れ計画を発表したが、SPILが出資受け入れを取りやめ、2社への出資計画も経済部投資審議委員会(投審会)の審査を通過せず、立ち消えとなった。こうした中、各社は中国商機を逃さないように、中国工場への出資受け入れに相次いで方向転換している。