次世代ディスプレーの有機ELがスマートフォンなどに普及する中、写真製版や印刷をルーツとする京都のメーカーが商機を見いだしている。
NISSHA(旧日本写真印刷)は有機ELを搭載したスマホ向けに操作用のタッチセンサーを販売し、エスケーエレクトロニクスやSCREENホールディングス(旧大日本スクリーン製造)は有機ELの製造工程で使う装置を供給。
高い精度の製造技術を強みに新たな市場で地歩を築いている。



 有機ELはパネル自体が発光するため、液晶のようなバックライトが不要で薄型化しやすい。折り曲げなどの加工が容易で、色の再現性が高いという特長もある。米アップルが今秋発売したスマホ「iPhoneX(アイフォーンテン)」で画面に採用したことから、スマホを中心に普及拡大が見込まれる。

 NISSHAは、電子機器の操作に使うタッチセンサーを手掛けており、有機ELを画面に用いたスマホにも採用されている。写真現像技術を応用したフォトリソグラフィーと呼ばれる方法を用い、素材のフィルムに高精細な回路パターンを形成できるのが特長だ。同社ディバイス事業部は「長年培ってきた写真製版やフィルム印刷の技術が生かされている」と力を込める。

 液晶パネルはタッチセンサーを内蔵できるが、有機ELは技術的に難しいため、パネルに外付けする同社製品のニーズが高まっているという。同事業部は「スマホだけでなく、自動車の表示装置などの他の用途にも使われるようになれば、ビジネスチャンスが広がる」と期待する。

 エスケーエレクトロニクスは、有機ELの基板に微細な回路パターンを転写するフォトマスクを韓国のパネルメーカー向けに販売している。写真でいうネガフィルムの役割を持つ装置で、源流には親会社の写真化学(京都市中京区)が育んだ写真製版技術がある。

 フォトマスクは今も液晶パネル向けが主流だが、同社経営戦略室は「有機EL向けもこの2、3年で出荷量に占める割合が2桁に乗った」と話す。17年9月期は設備投資に約65億円を充て、有機ELに要求される高精度な回路パターンを実現するためのレーザー描画装置を導入した。今後は中国のパネルメーカーも販路に見込む。

 写真化学の前身の石田旭山印刷から独立したガラススクリーンの研究部門を起源とするのが、SCREENホールディングス。同社も写真製版の技術を半導体製造装置や液晶パネルの塗布現像装置に応用してきた。

 有機EL向けでは、グループ会社のSCREENファインテックソリューションズ(上京区)が11月、パネルの回路形成に必要なレジスト(感光剤)を塗布する装置を発売した。基板上にレジストを均一に塗る技術と、有機ELの性能を左右する微小なごみや静電気の影響を取り除く機構を組み合わせた。

 同社ディスプレー事業統轄部は「液晶パネルから有機ELへのシフトが進めば、引き合いが期待できる」として、3年間で100ラインの販売を目標に掲げる。