調査会社のIHSマークイットは、2018年1月にFPD市場総合セミナー「第34回ディスプレイ産業フォーラム」を東京コンファレンスセンター・品川で開催する。本稿では、講演アナリストにインタビューする。「FPD市場総論」を担当する、シニアディレクターの謝勤益(デビッド・シェー)氏に話を伺った。

―テレビパネル市場は、2015年の後半に苦しい時期がありました。2017年、18年の市況推移については。
謝)2017年後半は供給過剰となり、価格下落が進んでいる。いくつかのテレビサイズでは、2015年相当の数値となっている。主な要因として中国での新規投資があるが、在庫調整は2018年の第1四半期まで続くだろう。2018年はどうかというと、第2四半期から回復基調に乗り、供給タイトな年になる見通しだ。というのも、テレビセットへの需要は依然として強く、特に55型や65型のニーズが高い。冬季オリンピックやFIFAワールドカップといったワールドワイドでのスポーツイベントがあることから、中国や米国市場では大型テレビの需要が大きく、2018年全体としては明るい見通しだ。



―2018年は中国で大型液晶工場が稼働を開始する予定です。供給過剰の懸念もありますが。
謝)第2四半期に、BOEの10.5G、CECパンダの8.6G工場が稼働する。しかし、10.5Gが完全、完璧に稼働開始するかは、技術的な観点から疑問視されている。ターゲットは65型の4K/8K高精細パネルだが、中国パネルメーカーの高精細化技術は韓国や台湾のレベルに達していない。さらに、TFTガラス基板の供給がタイトになるという見通しだ。基板ガラスを供給するコーニングや旭硝子はキャパ拡大に消極的であるからだ。

―テレビ市場における有機ELパネルについては。
謝)有機ELテレビについては、実質LGディスプレー(LGD)1社が供給している状況だ。同社の有機ELテレビの生産台数計画は、2017年は170万台、2018年は300万台であり、2000ドル以上の超ハイエンドモデル市場において、有機ELのシェアを拡大するだろう。特に55、65、70型の大型ハイエンドクラスでは、有機ELテレビが席巻していく。また、技術的に同社以外のパネルメーカーでの製造は難しく、今後2~3年は同社の独占市場となるだろう。

―スマートフォン(スマホ)市場の2017年は、有機ELがキーワードとなりました。
謝)iPhone Xがフレキシブル有機ELパネルを採用したことで話題となった。2018年のiPhoneは、フレキシブル有機ELが2モデル、LTPS(低温ポリシリコン)液晶が1モデルとなる見込みだ。2億6000万台のうち、5000万~6000万台が液晶モデルになるとみられ、ジャパンディスプレイがパネルサプライヤーだ。2018年は、有機ELがLTPS液晶の数量を超える見通しだ。LTPSが全体の30%、有機ELは32%を占める。ただし、アモルファスシリコン(a―Si)液晶は中国市場で多いHDやFHDパネル向けで需要が高く、38%を占める。2019年には有機ELが36%を占め、スマホ市場でメーンディスプレーとなる見通しだ。

―新技術の動向は。
謝)テレビの高色域化を実現する量子ドット(QD)フィルムが量産されていく。さらに2018年以降は、テレビの内部部材である導光板にQDを印刷したタイプも増えていくだろう。これにより筐体の薄型化が図れる。マイクロLEDについては、ディスプレーとしての採用は技術的ハードルが高く、量産化は当面ないだろう。しかし、バックライト(BLU)としての採用には注目だ。マイクロ、もしくはミニLEDを導光板に直接搭載することで、LEDパッケージやボンディング部分をなくし、BLU全体のサイズを縮小できること、信頼性を高められることから関心が高い。ただし、これらLEDはまだ歩留まりが低く、65型以上の超ハイエンドクラスでの採用となる。また信頼性の観点から、車載用パネルへの採用も検討されている。テレビ、PC、スマホパネル全体のトレンドとして、ベゼルレス化が進む見込み。これは、材料メーカーがどのような対応をしていくか注目だ。