シャープは2018年春にスマートフォン(スマホ)有機ELパネルの商業生産を開始し、夏にも自社のスマホに採用する。国内勢ではジャパンディスプレイ(JDI)グループが19年にも量産を始めるのに先行し、スマホ向け有機ELの商業生産は国内初。米アップルや韓国サムスン電子などが有機EL搭載のスマホを増やす中、シャープも新たなビジネス機会を探る。

堺事業所(堺市)などに数百億円を投じて有機ELパネルの小規模生産ラインを立ち上げており、このほど量産技術にメドを付けた。すでにサンプル出荷を始めており、2018年4~6月に本格稼働を始める。今後は商品化に必要な明るさや画質を調整する。18年夏以降に発売する自社ブランドの高級機種の一部で採用を目指す。



有機ELは自ら発光するためバックライトが不要で、端末の薄型化や軽量化を進めやすい。鮮やかな発色に加え、パネルを曲げやすいといった特長もある。このため、サムスンやアップルなどが有機ELを搭載したスマホを、韓国LG電子やソニー、パナソニックが有機ELテレビを発売する動きがでてきている。

ただ、有機ELパネルを安定的に生産する技術が難しく、世界でもスマホ向けはサムスンが1社で供給する状態が続いている。

シャープは液晶を主力事業と位置付けてより高精細な8Kパネルに経営資源を集中しており、テレビ向けの大型パネルでは当面、液晶に集中する方針だ。将来は車載向けなどスマホ以外への有機ELパネルの活用や、他社への供給も検討する。大型パネル以外では消費者の選択肢を増やす必要があると判断した。

国内のスマホ端末は海外メーカーが優勢だが、シャープは画面の縁が狭い大画面モデルや中価格帯製品の品ぞろえを増やしシェアを拡大している。調査会社のMM総研(東京・港)によると17年4~9月の国内出荷台数はアップルに次ぐ2位。18年には欧州での発売も検討しており、有機ELモデルの投入で海外でのシェア拡大も目指す。