鴻海18TJ2001-PN1-2台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が米アップルのスマートフォン(スマホ)「iPhone」製造部門を中国・上海で上場させる検討に入った。主力子会社にスマホ製造部門を移管することで、企業価値は数兆円規模となる可能性がある。米中での工場建設で投資が膨らむなか、巨額の資金調達につなげる。

 鴻海は31日に臨時株主総会を開き、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の産業向け事業を手掛ける子会社「フォックスコン・インダストリアル・インターネット」(FII)の上場を株主に諮る予定。複数の関係者によると、本体が手掛けるiPhone製造部門のFIIへの移管が検討されているという。



 鴻海の2017年12月期の連結売上高は4兆7074億台湾ドル(18兆円弱)。うち5割超をアップル関連が占めるとされ、iPhoneの製造はグループの中核事業だ。企業価値は数兆円規模になるとの見方がある。

 上場によりFIIは公募増資や社債発行など独自の資金調達がしやすくなる。親会社の鴻海はFII株の売却で、現金を得られる。ただ株式の85%は保有し、支配権は維持するという。

 鴻海が中核事業の上場に動く背景には、世界各地で成長に向けた大型投資計画が控えていることがある。中国・広州では1兆円規模を投じ、世界最大級の液晶パネル工場を建設中だ。17年9月には南京市政府と375億元(約6500億円)の投資協定を締結した。

米国ではウィスコンシン州のパネル工場で100億ドル(約1兆1千億円)を投じる。検討段階の計画も多いものの、投資資金をいかにして確保するかが課題となっていた。

 鴻海の郭台銘董事長は15年、内外で関連会社の上場を加速すると表明していた。今後も主力拠点であり、資金調達の環境が良好な中国で関連会社を上場させる動きが相次ぐ可能性がある。中国市場で調達する人民元建ての資金は現地での投資に充て、グループとして米国などへの投資に振り向ける資金余力を生み出す。

 鴻海自体は台湾で上場している。子会社の上場で、親会社の利益の一部が流出するなど、親子上場の弊害を指摘する声も根強い。