帝人はフィルム事業で高機能品の増産や生産の効率化に乗り出す。2018年中に国内工場で高付加価値品のポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを20%増産するほか、海外でも機能性のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム製品の生産を増やす。
設備を改修し、生産品目の切り替え時間を短縮する。投資額は10億円。新興国の台頭で苦戦が続き利幅が薄い汎用品の縮小や撤退を進めてきたが、今後は利幅の厚い機能製品を増やして収益力を底上げする。
 

中核拠点の宇都宮事業所(宇都宮市)で原料樹脂の押出機などを改修し、PENフィルムの生産能力を増強する。同フィルムは業界で帝人のみが生産し、引き合いも強い。特にLTO(磁気テープ記憶装置)向けなど高付加価値品の受注増加に対応する。

海外ではインドネシア工場(タンゲラン市)でPETフィルムにシリコン系樹脂などを塗工する設備を改修し、工業製品の生産工程に使われる離型フィルムの生産能力を高める。同製品は未加工フィルムより加工度が高く、市場拡大も期待できる。

PETフィルムは新興国との競争が激しいため、強みの高い樹脂塗工技術やノウハウを生かせる加工品にシフトする。

両拠点ともスリッター設備などの改修を進め、生産銘柄の切り替え時間を短縮する。高機能品の生産比率が上がる中で小口受注が増え、課題となっていた切り替えに伴う収率低下を改善する。細かな注文に柔軟に対応し、顧客開拓に生かす。

帝人はすでにフィルム事業で米デュポンとの海外フィルム製造合弁会社の売却を表明。また汎用化が進む液晶ディスプレー用白色ポリエステルフィルムの生産停止も決めた。事業縮小の一方で、高付加価値品分野へのシフトを加速する。