スマートフォン(スマホ)に使う有機ELパネルが供給過剰に陥っている。米アップルが初めて有機ELを搭載した「iPhoneX(テン)」の減産に入り、他のスマホメーカーの有機ELの利用も進まない。中国の有機ELメーカーは生産能力の拡大を進めており、価格競争が激しくなりそうだ。

 「サムスンは有機ELパネルの社外への販売を強めている」――。都内のある電子部品商社の幹部が明かす。販売不振に陥ったiPhoneXの生産量は1~3月期の当初計画の4000万台超から半減する見通し。パネルを独占供給していた韓国サムスン電子の生産能力も余剰となる。



サムスンがiPhoneX向けに納入する有機ELパネル(タッチセンサー含む)は1枚100ドル超。高い精度の色を出したり、パネルを曲げて額縁が細くできたりといったメリットがある。

ただ併売する「iPhone8プラス」に使う液晶パネルと比べ価格は2倍近い。部材費の負担増はXの端末価格が999ドルからと高額化する一因となった。

サムスン自身も高いパネルを使ったスマホの販売拡大は容易ではない。英調査会社のIHSマークイットによると、サムスンが自社スマホ向けに内部調達する有機ELパネルの数量は、17年に前の年を下回った。「有機ELを使うと他メーカーとの価格競争が難しい」(早瀬宏シニアディレクター)

原価の上昇を端末価格に転嫁しきれない中級機種は有機ELの利用の頭打ちが鮮明だ。中国の主要スマホメーカー、OPPO(オッポ)やvivo(ビボ)のスマホに占める有機ELパネルの採用比率は5~10%で足踏みする。鮮やかな色を表現できるLTPS(低温ポリシリコン)タイプの液晶と比べても4割高い価格がハードルになる。

米調査会社、ディスプレイサプライチェーンコンサルタンツは、スマホ向け需要の不振でサムスンの有機ELパネル工場の稼働率は50~60%にとどまるとみる。供給能力の過剰を背景に「(ガラス基板を用いた)リジッド品は価格が下がっている」(田村喜男アジア代表)。

供給能力も世界的に拡大する。18年以降、韓国LGディスプレーが新ラインを立ち上げる。中国勢の京東方科技集団(BOE)や天馬微電子も政府の補助金を支えに新工場が稼働。供給能力は20年までに17年比で2倍になる見通しだ。スマホ用有機ELパネルでサムスンが95%超のシェアを確保していた独占状態は崩れる公算が大きい。

価格競争が激しくなる兆しが出るなか、サムスン電子は有機ELパネルを使い画面を折り曲げられる「フォルダブル」スマホの開発を急ぐ。

供給過剰を乗り切るには、加工度が大きい有機ELならではの魅力を訴える製品開発が欠かせない。18年から19年にかけ量産体制の整備を進めるシャープやジャパンディスプレイが国際競争に勝つためのハードルはさらに上がりそうだ。