東洋紡は27日、犬山工場(愛知県犬山市)で液晶用フィルムを増産すると発表した。生産量は現在の2倍になる。投資額は100億円。2020年5月の稼働を目指す。東洋紡が生産する液晶用フィルムはポリエステル製で耐久性があり、光の屈折による色むらが発生しないのが特徴。液晶ディスプレーの大型化に伴い、引き合いが強くなっている。

 生産しているのは液晶用の超複屈折フィルム(SRF)で、液晶パネルの偏光板に使われる。現在は犬山工場と敦賀事業所(福井県敦賀市)のそれぞれ1ラインで生産している。今回の増産では、犬山工場に新棟を建設した上で1ライン増設し、合計3ラインにする。



既存の2ラインは工業用フィルムや包装用フィルムも生産できる兼用機だった。新棟には専用機を初めて導入し、生産効率を高めることで生産量を倍増させる。日本や韓国、台湾などの偏光板メーカーに販売する。約500億円の保護フィルムの世界市場で、21年度に17年度の2倍となる200億円の売り上げを目指す。

東洋紡によると、液晶ディスプレーの市場は年率3%の成長が見込まれている。液晶ディスプレーの大型化に伴い、保護フィルムの需要も拡大しているという。従来、保護フィルムは写真フィルムの技術を応用した「TACフィルム」が主流だったが、湿気や温度の変化で変形する課題があった。SRFはポリエステル製で、高温高湿下でも変形しにくい。光を通したときに色むらが発生するポリエステルの欠点も屈折率を変えることによって克服した。

液晶テレビは外枠がなかったり小さかったりする「ベゼルレス化」が進んでいる。フィルムを外枠で固定しなくても変形する恐れがないSRFは、TACの代替として需要の獲得を狙う。