液晶パネルに使う部材の市況が持ち直しつつある。パネル価格の下落が続いた影響で、全体の6割を占めるテレビ向けの需要が回復傾向にあるためだ。画面サイズの大型化に加え、今年は販売台数も増える見通し。中国で進む最先端工場への投資も追い風だ。
半導体市況の好調が波及した品目も出始めている。

「価格の下落がマイルドになっている」。液晶パネルのガラス基板大手、 AGC旭硝子の鷲ノ上正剛執行役員は話す。テレビサイズの大型化に伴う需要が下支え役だ。



2017年の世界テレビ販売台数は16年を下回ったが、基板需要を左右する画面サイズは着実に大型化している。英調査会社IHSマークイットによると、世界市場の平均テレビサイズは17年に42.3インチ。年間1インチのペースで拡大が続く。基板ガラスの面積需要は17年に16年比3%伸びた。

中国の電子商取引(EC)サイトでは65型のテレビが5千元(約8万3千円)前後。値ごろ感から需要が強い。18年は6月のサッカーワールドカップ(W杯)ロシア大会の効果もあってテレビ販売は回復する見通しだ。
需要の増加を映し、中国パネルメーカーは使うガラス基板のサイズが「10.5世代」と呼ばれる最先端工場の投資を進めている。京東方科技集団(BOE)は17年12月に世界で初めて工場を稼働。華星光電(CSOT)も準備を進めている。

こうした動きを背景に、ガラス基板の平均単価は値下がりが緩やかになっている。現在は1平方メートル当たり1500円台半ば。16年まで前年同期比1割以上の下落率が続いたが、17年は下落率は1割を切ったもよう。「18年は5%前後まで縮小する可能性がある」(IHSマークイットの宇野匡上席アナリスト)

テレビの大型化の恩恵は、液晶パネルの透明電極材に使うITO(酸化インジウムすず)ターゲット材にも及ぶ。堅調な需要を反映し、1~3月分の国内取引価格は3年半ぶりに上昇した。主原料のレアメタル(希少金属)、インジウムの価格が上昇し、メーカーの三井金属やJX金属が数%の値上げに踏み切った。

パネル制御に使う半導体のドライバーIC(集積回路)も一部が値上がりし始めた。台湾の受託生産大手、聯華電子(UMC)の生産削減で供給不足に陥っている。需要が伸びる車載半導体などに生産設備を振り向けているためだ。特にこれまで単価の安かったパソコン用液晶パネルのドライバーICの不足感が強い。

テレビやパソコン向け液晶パネルの価格は前年同期の高値の反動で4~6月期までは下落局面が続く見通し。部材の調達コストがかさめば、パネルメーカーの収益を一段と圧迫しそうだ。