米中貿易摩擦が世界のスマートフォン(スマホ)や通信設備のサプライチェーンに影を落とし始めた。米商務省が16日に米企業に対して中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)との取引を今後7年という長期間禁じることを決めた影響で、同社の生産は「多くが停止状態だ」(関係者)。
停止が長引けばZTEの経営だけでなく日米企業の供給や調達にも影響を及ぼす。



「クアルコムやインテル、ブロードコムなど(米国の)取引先との電話や技術交流が禁止になった」。ZTE関係者は諦め半分にこう話す。中国メディアも「ZTEの在庫はあと1カ月で尽きるが、すでに生産ラインは現在ほぼ中止状態だ」と伝えている。

 取引禁止令が出たのは、ZTEが2010~16年の長期にわたって米国の輸出規制に違反し、ダミー会社を使うなどして米国からイランや北朝鮮に巧みに通信機器を輸出していたためだ。ZTEは認め、17年3月に罰金(約1300億円)を支払うことで双方が合意した。

 しかしその後もZTEは虚偽報告を続けたため、米当局は16日、今回の新制裁に踏み切った。

 ZTEは中国を代表する大手国有上場企業。米国政府の新制裁は「スマホ・通信設備という中国政府の後ろ盾を得た重要産業の大手企業を狙い撃ちしたものだ」(関係者)との見方が多い。

 スマホ業界でZTEの存在感は増している。17年の世界出荷台数は約4300万台で世界シェアは9位。7割は海外向けで、特に米国が2100万台と約半分を占める。米国シェアは約12%とみられ第4位だ。

 中国企業のZTEがなぜ、米企業との取引停止で苦境に陥ったのか。スマホの中核技術を米企業に頼っているからだ。

 一つはスマホの頭脳となる半導体で、米大手のインテルやクアルコムから大部分を調達する。ZTE製スマホの部品数の約3割は米企業製だ。

 もう一つはスマホ用基本ソフト(OS)で、米アップルの「iOS」と米グーグルの「アンドロイド」の実質2つしかない。ZTEはアンドロイド製OSを使う。

 次世代の高速通信の中核技術「5G」についても、ZTEはインテルやクアルコムと2月末に開発の協力を進めると発表したばかり。成長事業も中止となる公算だ。

 米中摩擦は中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)にも影響を与えそうだ。米連邦通信委員会(FCC)は17日、米国内の通信会社に対し、安全保障上の観点から外国企業からの通信機器の調達を禁じる方針を決めた。念頭にはファーウェイとZTEがある。

 2社の通信機器が中国政府のスパイ活動に使われる恐れがあるという。ともに中国共産党と非常に近い関係にあると指摘されている。米議会は既に12年に米国企業に対し、同2社の通信機器を使わないよう求めていた。今回の新規制で2社からの調達は禁止となる。

 新制裁は米企業にも影響が及ぶ。クアルコムやインテルの通信機器用チップの多くがZTEとファーウェイの2社向けとされる。米中摩擦が長引けば、米国勢も供給先の見直しを迫られる。