スマートフォン(スマホ)への有機ELパネルの普及が従来の想定より緩やかになりそうだ。米アップルが初めて有機ELパネルを採用した「iPhoneX(テン)」の販売が振るわず、有機ELの出荷が滞った。市場の関心は19年以降に発売されるiPhoneの将来モデルに集まる。

 パネル産業の調査会社、米ディスプレイサプライチェーンコンサルタンツ(DSCC)は、2020年のスマホ用有機ELパネル出荷を7億7千万枚と予測する。17年11月時点に予測していた数字と比べ2割強下方修正した。DSCCの田村喜男アジア代表は「iPhoneXの販売不振を織り込んだ」と説明する。

 有機ELパネルは液晶と比べ色の表現力や形状の自由度が高い半面、価格が高い。iPhoneXに使われた有機ELパネルの価格は1枚約100ドルで液晶の2倍近いとみられる。端末価格が999ドル(日本は税別11万2800円)からと高額になる一因となり、従来モデルに需要が流れた。



 アップルの動向を横目にみた主要中国メーカーも有機ELの調達を絞った。DSCCは有機ELの普及が遅れることで、液晶パネルの出荷は20年まで有機ELを上回る10億1800万枚を維持すると予測する。当初は20年と見込まれた有機ELと液晶とのシェア逆転は、21年になりそうだ。

 有機ELの普及遅れは液晶大手のジャパンディスプレイ(JDI)に追い風となる。東入来信博会長は5月に開いた決算記者会見で「有機ELに対する風向きが変わった」と話した。iPhoneの18年モデルに向けて、液晶パネルの受注が伸びているもようだ。

 英調査会社IHSマークイットも、iPhoneXなどに採用される樹脂基板を使った有機ELパネルの18年の出荷見通しを1億6700万枚に下方修正した。Xの販売不振が明らかになる前は17年比倍増を見込んでいたが、予測を見直し34%増にとどまる計算だ。

 18年秋にも発売される次期iPhoneシリーズは「液晶モデルの方が有機ELと比べ出荷台数が多くなると想定している」(IHSの早瀬宏シニアディレクター)。

 一方、スマホ向け有機ELパネルで世界シェア首位の韓国サムスン電子は、稼働率を維持するため中国スマホメーカーへの売り込みを強化している。液晶との販売競争が激しくなっている。

 今後の焦点は19年以降のiPhoneにどのパネルが採用されるかだ。5月には一部韓国メディアが19年モデルのiPhoneが全量有機ELに移行すると報じた。ただ「いずれ有機ELに移行するが、19年モデルは時期尚早」(IHS早瀬氏)と懐疑的な見方が多く、アップルの戦略をパネルメーカーが注視する展開が続きそうだ。