サムスン電子経営支援室所属役員は4-6月期業績速報値発表の7月6日を控えてあふれる証券会社のリポートを見るたびに「やきもきする」という。会社内部の業績見通しと「異なる状況」だからだ。ほとんどの韓国系証券会社はサムスン電子が下半期に過去最大の業績を再び塗り替えると予想している。外資系証券会社も同様だ。この1カ月間にサムスン電子の業績見通しを調整した外資系証券会社3社のうち2社が業績目標値を上方修正した。

このところサムスン電子の雰囲気は証券会社の「バラ色の見通し」とは正反対だ。年初には会社内部で「携帯電話とテレビなどセット(完成品)事業が危機」としていた。最近に入り「半導体・部品(DS)事業も自信を持てない」という話が出回る。サムスン電子の財務ラインはすでに下半期の業績が上半期より鈍化すると予想している。1-3月期の業績発表当時、「下半期の業績は半導体とディスプレーなど部品事業を中心に上半期より改善されるだろう」とした予想が3カ月ぶりにひっくり返った。



  サムスン電子高位関係者は「半導体景気と為替相場の変数などが残っているが内部的には今年の営業利益が昨年の53兆6500億ウォンを下回る可能性も排除できないという危機感が広がっている」と打ち明けた。上半期の営業利益は29兆ウォン前後、下半期は24兆ウォン水準にとどまるかもしれないということだ。韓国系証券会社の今年の営業利益見通し平均(コンセンサス)は昨年より22.6%高い65兆7600億ウォンに達する。

  サムスン電子の業績が悪化する核心原因は携帯電話事業が属するIT・モバイル(IM)部門の不振にある。プレミアム市場では米アップルのiPhoneに押され、中低価格市場では数年前まで1段階格下と考えていたファーウェイ、オッポ、ビボなど中国の後発メーカーが急速に追い上げてきており、サムスン電子の市場シェアは下方曲線を描いている。IM事業部は不振を挽回するためにプレミアムスマートフォンである「ギャラクシーS9」シリーズを例年より1カ月ほど繰り上げ3月に早期発売する勝負に出た。

  だが成績は期待に大きく及ばなかった。業界では「ギャラクシーS9シリーズの今年の販売台数は3500万台でこれまでのギャラクシーシリーズのうち最低水準にとどまるだろう」(ドイツ銀行リサーチセンター長ハン・スンフン氏)と予想した。サムスン内部的には今年IM事業部の営業利益が昨年の11兆8300億ウォンより20~30%ほど減るとみている。サムスン電子が2年前のギャラクシーノート7の「バッテリー発火」事件の悪夢にもかかわらず、ギャラクシーノート9を8月に早期発売しようとするのもこうした危機感のためという分析だ。

  スマートフォン事業不振は核心収益源の半導体・部品(DS)部門にも連鎖的に影響を及ぼしている。スマートフォンの革新技術が減り最新スマートフォンを求める需要が減少して携帯電話買い換え周期が長くなっているからだ。アップルなどスマートフォンメーカーにサムスン電子が供給するDRAM、NAND型フラッシュ、有機ELディスプレーの販売台数が減るほかはない構造だ。

  サムスン電子内部では今年下半期のDS部門業績は上半期と同水準にとどまるという見通しが出ている。内外の証券会社が予想する下半期のDS部門四半期業績(12兆~13兆ウォン)より1兆~2兆ウォンずつ低い水準だ。ただサムスン電子DS部門で収益の半分を占めるDRAMは需要より供給が不足しているという。サムスン電子関係者は「10-12月期のメモリー半導体景気と為替相場が今年の業績を左右するだろう」と話す。

  テレビと生活家電事業が属する消費者家電(CE)部門は超大型テレビ戦略とワールドカップ特需などにより今年唯一業績が改善されている事業部だ。だがCE部門の年間営業利益は1兆~2兆ウォン水準で会社全体の業績に及ぼす影響は大きくない。

  会社内部では最近の業績悪化をやり過ごしてはならないという警告の声が大きくなっている。一時的な現象ではなく構造的な変化という点からだ。過去▽半導体▽携帯電話▽テレビ▽ディスプレーなどに多角化されていたサムスン電子の収益構造が最近半導体一辺倒に急速に再編されているという指摘も出ている。サムスン電子の全営業利益でDS部門が占める割合は2013年の18.8%から今年末には80%に迫ると予想される。同じ期間にIM事業部の営業利益の割合は68%から10%台に大きく落ち込む見通しだ。サムスン電子関係者は「好況と不況が繰り返される半導体事業への依存度を減らさなければならないが、すぐには半導体に代わる成長動力を探すのは容易でない」と吐露した。