台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が、米で投資の幅を広げている。パネル工場を中心に100億ドル(約1兆1300億円)規模の投資を進める米中西部ウィスコンシン州で、スマートシティーなどの研究開発拠点としてビルの購入を決定。中国生産を追求して電子機器の受託製造サービス(EMS)世界最大手に成長したが、米中貿易摩擦が過熱する中、米シフトを一段と加速している。

鴻海は米時間2日、ウィスコンシン州ラシンにある「ワン・メイン・センター」を買収すると発表した。ビルは3階建てで、床面積は約4300平方メートル。買収金額は開示していない。



ラシンは鴻海のパネル工場建設地のすぐそば。あらゆるモノがネットにつながるIoTの進展で家電などにもパネルが搭載されるようになっている。鴻海は家電に強い傘下のシャープの力も動員し、スマートシティー関連で商機を探るようだ。

8月にはウィスコンシン大学マディソン校を郭台銘(テリー・ゴウ)董事長が訪れ提携を決定。医療や材料科学などの研究所設立に向け1億ドル規模の資金支援をする。郭氏は「鴻海はウィスコンシンの地域社会の長期的なパートナーだ」と強調した。

鴻海が米シフトを加速するのは、米中貿易摩擦に対する危機感の表れだ。米アップルなどの顧客がトランプ米政権の求めに応じて中国から米国に生産地を移せば、鴻海は工場移転に伴うコスト負担や失注などの影響が避けられない見通しだ。

鴻海は中国でも液晶パネルや半導体分野の投資を打ち出し、米中とのバランスに腐心する。アップル需要の減速や貿易摩擦の悪影響への懸念が強まり、株価は昨年夏の高値から4割近く下落。米中両にらみの独特の戦略について、投資家は先行きを測りかねている。