大手電力会社による家庭用太陽光発電の高額買い取りが今年11月以降、順次、期限切れになるのに伴い、宙に浮く電力をめぐる争奪戦が激しくなりそうだ。再生可能エネルギーが注目される中、新ビジネスの展開に向けて太陽光の電力を確保する思惑がある。電力大手と新電力が買い取りを競うほか、電力を自宅で使う設備を売り込む動きも出ている。

 家庭用太陽光は2009年11月、電力大手に高額での買い取りを義務づけた制度が始まった。買い取り期間は10年間のため、今年11月以降に買い手が不在になる恐れがあり、「太陽光発電の2019年問題」とも呼ばれる。期限切れを迎える家庭は今年だけで約53万件(累計出力約200万キロワット)。23年までに約165万件(約650万キロワット)に上り、発電容量でみると、家庭用全体の6割超に達する。



 期限切れを迎える家庭には▽電力大手や新電力の新設メニューに契約し、引き続き買い取ってもらう▽電気自動車や蓄電池を購入し、余った電気を充電して夜に自宅で使い、電気料金を抑える――の二つの選択肢がある。

 資源エネルギー庁は昨年9月、対象家庭が今後の対応を具体的に検討するため、電力大手10社に高額買い取り終了後の料金メニューを今年6月までに公表するように求めた。

 中部電力は電力大手で先駆けて買い取り継続を表明。新電力のLooop(ループ、東京)と資本業務提携し、新サービスの展開を予定する。他の電力大手も「まだ発電できるものを無駄にするのはもったいない」(九州電力の池辺和弘社長)として買い取りメニューを策定する方針だ。

 新電力も活発に動いている。スマートテック(水戸市)はいち早く、1キロワット時10円という買い取り価格を公表し、電力獲得を目指す。ガス会社のTOKAIホールディングス(静岡市)や丸紅新電力(東京)もそれぞれほかの新電力と新会社を設立。東京電力ホールディングス(HD)やパナソニックは自宅での使用増を見込み、関連プランや商品を投入する。

 背景には、二酸化炭素を排出しない再生エネが新たな商機になるとの期待感がある。ソニーやイオンなど、再生エネ100%の電力での事業活動を目指す企業連合「RE100」に加盟する日本企業も増えてきた。太陽光の電気には一定の需要が見込まれ、小売会社も収益拡大を期待する。ある電力関係者は「再生エネの価値が高まり、ビジネスチャンスが広がっている」と話す。【浅川大樹】



 ◇太陽光発電の2019年問題

 大手電力会社に家庭用太陽光の余剰電力買い取りを義務づけた制度が2019年11月以降、順次10年間の期限を迎え、電力の販売先が一時的に宙に浮きかねない問題。国は太陽光の普及支援のため、この制度のもと、高額な買い取り価格(制度開始当初は1キロワット時48円)を定めた。太陽光パネルは20~30年以上発電が可能で、対象家庭は買い取り期間終了後、余剰電力を大手電力会社や新電力と新たに契約して販売を続けられるほか、蓄電池などを購入して自家消費に回して電気料金の抑制につなげることもできる。


太陽光発電アドバイザー試験対策問題集改訂版 実施団体の監修による問題集 [ 太陽光発電アドバイザー試験対策研究会 ]
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