3月22日、米国・シリコンバレーのアップル本社に、官民ファンドであるINCJ(旧産業革新機構)の志賀俊之会長と経済産業省幹部の姿があった。2人がそろって訪れたのは、液晶大手ジャパンディスプレイ(JDI)再建のカギをアップルが握っているからだ。

 経営再建中のJDIは、中国と台湾の企業連合から600億円規模の出資を受ける方向で交渉を進めてきた。

 中台連合に参加するのは、中国シルクロード・インベストメントキャピタル、中国最大の資産運用会社の嘉実基金管理、台湾のタッチパネルメーカーの宸鴻集団(TPKホールディング)、中国の自動車部品メーカーの敏実集団(ミンス・グループ)などである。



 年度末である3月までに基本合意することを目指していたが、その交渉がぎりぎりの場面で難航していることが分かった。その大きな原因は「アップルがJDIを“搾取“する不平等な契約にある」(交渉関係者)という。いったいどういうことなのか。

 JDIは2016年12月に主力液晶工場である白山工場(石川県白山市)の稼働を開始した。その建設費用の大半は、アップルからの総額1700億円の「前受け金」で賄われた。

 前受け金とは、一般的には製品を販売する前に受け取る代金を指すが、JDIの場合は、工場建設のためにアップルが立て替えた事実上の借金を意味する。

 関係者によると、アップルはJDIに対して「年間2億ドル(約220億円)または売上高の4%のいずれか高い金額を四半期ごとに返済する」「JDIの現預金残高は300億円以上を維持する」という2つの契約条項を課している。これでJDIは返済義務を負っている。

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