suwa_2経営再建中の日本の中小型液晶ディスプレイメーカー、ジャパンディスプレイ(JDI)が、台湾のタッチパネル大手、宸鴻科技集団(TPKホールディング)など台湾と中国の企業が共同出資する「Suwaインベストメント・ホールディングス」の傘下に入る。TPKなどは、JDIの有機EL(OLED)パネル量産化を支援するとともに、川上と川下の垂直統合を推進し、アップルのiPhoneの有機ELモデル向け供給を目指す。13日付経済日報などが報じた。

TPKは12日、金融大手の富邦集団創業家の蔡氏一族の投資会社2社、中国の嘉実科技投資管理(ハーベスト・テック・インベストメント・マネジメント)と共に形成するSuwaが、JDIに800億円の出資を行うと発表した。普通株への420億円出資後のSuwaのJDIに対する持ち株比率は49.8%で、筆頭株主となる。出資完了は6月以降とみられる。



 Suwaに対する各社の持ち株比率は、▽TPK、41.8%▽蔡氏一族の投資会社2社、計23.6%▽ハーベスト、34.5%──。TPKが液晶パネル事業強化への協力、ハーベストがスマホで液晶ディスプレイ(LCD)からの移行が進む有機EL事業立ち上げへの資金協力を担う。

 TPKは、提携によりタッチパネルとディスプレイ分野での川上・川下協力と垂直統合を促進し、生産向上と新技術開発でのシナジー効果を発揮できる他、車載用スクリーン向けタッチパネル市場でのシェア向上を狙うと説明した。JDIが顧客とする日本とドイツの自動車大手への供給拡大が期待でき、車載用タッチパネルの粗利益率は消費者向け電子製品向けより高いため、TPKの利益に貢献する見通しだ。

 台湾、中国、韓国の液晶パネル産業が成長する中、2016年の鴻海精密工業によるシャープ買収に続き、JDIが「台中連合」の傘下に入ることで、かつてパネル市場を席巻した日本勢は外資の傘下に入ることになった。JDIは12年、日立製作所、東芝、ソニーの液晶ディスプレイ事業を統合して発足。アップルが売上高の過半を占めるとされるが、アップルが有機EL(OLED)採用を進める中、5年連続で赤字のJDIは外資入り以外に有機EL投資への有効な手段がなかったのが実情だ。

 JDIはまず、年内にアップルの腕時計型ウエアラブルデバイス(装着型端末)「Apple Watch(アップルウオッチ)」向けにアクティブマトリックス式有機EL(AMOLED)ディスプレイを供給し、その後20年に発売されるiPhone向けに有機ELディスプレイの供給を目指すとされる。20年発売のiPhone3機種は全機種が有機ELパネルを採用するとみられており、LCDからの移行がJDIにとって急務となっていた。JDIのiPhoneへの供給継続は、タッチパネルを供給するTPKにとっても重要だ。

 一方、TPKは折り畳み(フォルダブル)式スマホへの実現に必要な銀ナノワイヤ(SNW)技術を有しており、JDIの有機ELパネルへの応用で同市場を開拓するとの見方も出ている。折り畳み式スマホはサムスン電子の「ギャラクシーフォールド」の4月末の米国発売に続き、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の「メイトX」が6月の発売を予定しており、今後のスマホ市場でのトレンドとなると期待されている。