06052019EAF001-PB1-4台湾の中央通信は6日、電子機器の受託製造サービス(EMS)世界最大手、鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長の後任に、郭氏の最側近である黄秋蓮・総財務長が就任する方向だと報じた。郭氏は2020年1月の総統選出馬に伴い、経営の第一線から退く方針を示していた。同社はコメントを避けた。

黄氏は郭氏の死別した前妻の叔母だ。年間売上高18兆円超を誇る鴻海がかつて、小さな町工場だった時代から金庫番の役割を担い、現地では「銭ママ」の愛称で知られる郭氏の腹心中の腹心だ。

黄氏は郭氏とのパイプ役を担う可能性がある。中央通信は郭氏が鴻海グループの中核会社・鴻海精密工業の董事長を黄氏に譲る一方、グループ全体を束ねる総裁職には留任すると報じている。実質的には郭氏が影響力を残す体制になる可能性がある。



郭氏は6日午後、直近の米国訪問について報告する記者会見を台北市内で開いたが、後任人事に関する質問についてはコメントしなかった。鴻海は6月21日に北部・新北市の本社で定時株主総会を開く。総会にかける董事(取締役)の選任案は近く開示される見込みで、黄氏がリストに載れば董事長になる可能性が出てくる。

郭氏は会見でトランプ米大統領が5日に対中追加関税を表明したことについても言及した。「協議はいつか合意に達するだろうが、(米中)2強の争いは今後も続く」と指摘。鴻海はスマートフォン(スマホ)などを主に中国で受託生産し、世界市場に送り出して成長したが、「今後必要があれば(生産網を再編する)準備はできている」と述べ、米国生産の強化を示唆した。