米国が新たに準備している残る全ての中国製品への制裁課税には、北米のブラックフライデーセールで目玉商品となる液晶テレビなど、コンシューマーエレクトロニクス製品が含まれ、テレビブランドや米国小売業界で警戒感が高まっている。

 市場調査会社、IHSマークイットの謝勤益(デビッド・シェイ)シニアディレクターによると、液晶テレビ業界では、ブラックフライデー向けに例年7~9月に行われるパネルメーカーや受託生産メーカーとの価格交渉が、5~6月に早まる見通しだ。中国のパネルメーカー、恵科(HKC)や中電熊猫信息産業集団(CECパンダ)は大幅値下げで臨むとみられ、低迷しているパネル価格のさらなる下落要因となりそうだ。パネル価格下落などにより、台湾のパネル大手、友達光電(AUO)と群創光電(イノラックス)は第1四半期そろって赤字だった。



 テレビ用パネル価格は、全体として3~4月に下げ止まり、上昇に転じていた。このうち、32インチ、43インチパネルは小幅上昇、55インチは下げ止まり、65インチ以上は価格下落幅が縮小した。

 ただ、IHSマークイットによると、5月上旬のオファー価格は据え置かれたもようで、大型テレビ向けパネルは価格下落が続く見通しだ。サムスンディスプレイ(SDC)が忠清南道牙山(アサン)工場で進める第8.5世代液晶パネル生産ラインから量子ドット有機EL(QD-OLED)への転換が遅れていること、HKCやCECグループの第8.6世代工場での新規生産ライン開設で、特に32インチ、50インチ、58インチで価格引き下げ圧力が高まっている。

 謝総監は、6~7月にオファー価格上昇はみられず、50インチ以下は在庫増加が引き下げ要因となる他、55インチ以上の下落が続くと分析した。

 米中貿易戦争で世界的に購買意欲が弱まれば、コンシューマーエレクトロニクス製品の販売の落ち込みが懸念される。

 行政院主計総処は24日、米中貿易戦争の再燃後で初めて、通年の実質域内総生産(GDP)成長率予測値を発表する予定だ。従来予測は2.27%。通年で2%台を維持できるかが注目される。

 10日の制裁関税引き上げを受け、投資台湾事務所(インベスト台湾)には同日、台商(海外で事業展開する台湾系企業)からの問い合わせの電話が相次いだ。沈栄津経済部長は先週、経済部工業局に対し、制裁関税引き上げで影響を受ける▽ネットワーク設備▽ロー~ミドルエンド自転車▽部品──などの業界で、中国で生産する台商に直接電話で生産移転状況を確認し、台湾へのUターン投資を支援するよう指示している。