世界最大の中国のテレビ市場が急失速している。2018年の販売総額は11%減と2年ぶりに大きく落ち込み、直近の1~3月も同16%減と歯止めがかからない。国内ではいまだ40ものテレビブランドが乱立する。最近は中古部品や不良部品を使う格安テレビが出回り、販売価格を大きく押し下げ、事業環境をさらに悪化させている。事態を探るため、中国で今、増殖する格安テレビの街を歩いた。

「おい、このテレビ、いるか?」

中国南部の中核都市、広東省広州市郊外の番禺(パンユウ)――。昼でも薄暗い古びたアーケード街を歩いていると、ぶっきらぼうに中年男性が声をかけてきた。言われるがまま8畳ほどの店をのぞくと男性数人が気だるそうに中国ドラマを見ていた。そのテレビを売ってくれるのだという。



見た目は新品だが、テレビにブランド名は無い。ただ、65インチの大型液晶パネルが韓国製であると知り、値段が高いとも思ったが、価格はなんと3千元(約4万8千円)。大手メーカーの3分の1程度と格安だった。

雑然とした店の中を見回すと、京東方科技集団(BOE)や韓国サムスン電子など大手のテレビ用液晶パネルメーカーのロゴが入った発泡スチロールの箱がたくさん積み重なっていた。

中身は、京東方やサムスンなどの工場から横流しされた不良品や中古テレビから取り外した液晶パネルだという。そこでは、一枚一枚のパネルを裏側から光を当て、動作状態を確認し、ここに来るテレビ業者に卸す作業員の姿が見て取れた。

この古びたアーケード街にはこうした液晶パネルのほか、電子基板などを含め部品の卸売業が50軒以上も軒を連ねていた。周辺にはここから部品を集めてテレビに仕上げる業者が点在し、一帯でいわば「格安再生テレビ工場」を形成していた。

18年、この番禺などで生産された格安の再生品のテレビが、中国で有名な通販サイトで大量に取引され、市場を荒らしたことが問題となった。再生品とはいえ、見た目は新品同然。多くは大手メーカーのロゴを偽った模造品だった。

そのため政府も問題業者を排除し、事態は一端沈静化したかに見えた。だが、問題となった格安テレビを売る業者は今もこうして生き残っていた。理由は通販サイトの販路が途絶えても、農村部へトラックで運び、ノーブランド品として大量に売りさばく販路が健在で、もうかるからだった。

こうしたテレビ再生街はこの1年間ほどで中国で広がり、販価を押し下げ、大手メーカーの収益を圧迫するに至っている。あおりを受け、18年は大手の海信集団(ハイセンス)の純利益は6割減、康佳集団(コンカ)も9割減と急減した。

中国調査会社の北京中怡康時代市場研究も、テレビは既に各家庭に行き渡り「需要の低迷に加え(格安業者の流入で)販売単価がかなり下がっている」と、業界が抱える二重苦を指摘する。

実際、同社の調べでは中国で販売するテレビ大手9社の中で、通販サイトにおける平均のテレビ販価が17年から18年にかけて上昇したのは、高級テレビの販売に絞るソニーとサムスン電子の2社だけ。一方で中・低級機を手がけるハイアールやハイセンスなど中国勢は最大10%強も下落した。

「今は、もう安ければ何でもいいわ」。最近、広州市内で引っ越しをした湖南省出身の20代女性は通販サイトでテレビを買った。ブランド名は「暴風」。全く聞いたこともないブランドだったが、32インチで600元(1万円弱)。大手メーカーの7割程度の価格が購入の決め手だったという。