検察捜査がサムスン電子のイ・ジェヨン副会長周辺を取り囲む幾重もの“盾”を切り崩している。5日未明にはイ・ゴンヒ会長時代からグループの財務を任されてきたサムスン電子財経チームのL副社長が拘束された。サムスンバイオロジックス(サムスンバイオ)会計詐欺に対する捜査で、拘束されたサムスン電子の副社長は3人に増えた。

 サムスン内部ではいつにも増してL副社長の拘束に神経を尖らせているという。今年3月から本格化した検察の捜査が、この事件の“核心”に近づいたことを示すものと見られる。



 ソウル中央地裁のミョン・ジェグォン令状担当部長判事は同日未明、「犯罪の疑いが相当部分解明されており、事案が重大だ」としてL副社長の令状を発行した。L副社長は昨年5月5日、サムスン電子の瑞草社屋で会議を開き、サムスンバイオと子会社のサムスンエピスの会計関連資料などを隠ぺいするよう指示した疑い(証拠隠滅教唆)がもたれている。

 財務通のL副社長の拘束は、証拠隠蔽に集中していた検察捜査の重心がグループレベルの会計詐欺に移動することを予告するものと見られている。これまで拘束されたサムスン電子の役員や社員は副社長と常務各3人ずつを含めて計8人に上る。彼らは証拠隠滅容疑で拘束されたが、L副社長はこれまで拘束された人たちとは地位と役割が明確に異なる。証拠隠蔽会議を主管したが、基本的に財務専門家で、同事件の本流であるサムスンバイオの会計詐欺に深く関与した可能性が高いからだ。

 サムスングループのトップ一家の「金庫番」と言われ、サムスンバイオ会計関連の秘密組織の株式買入TFの核心人物としても知られる。このため、サムスン側は共に令状が請求されたAサムスン電子事業支援TF副社長よりも、L副社長の拘束を阻止するのに力を入れたという。しかし、裁判所は、A副社長の令状は棄却する一方、グループの会計を知り尽くしているL副社長については「重大な事案だ」として令状を発行した。

 L副社長はイ・ゴンヒ会長時代、グループのコントロールタワーだった構造調整本部の財務部チーム長や戦略企画室戦略支援チーム部長を務めた。イ・ジェヨン副社長体制では、未来戦略室戦略チームの役員として、グループ全般の財務を取り仕切ってきた。今回の会計詐欺事件の出発点と目された2015年の第一毛織とサムスン物産の合併にも深く関与したという。チェ・ジソン(元未来戦略室副会長)-キム・ジョンジュン(元未来戦略室社長)につながる報告ラインの一軸だったともいわれている。

 この事件を捜査しているソウル中央地検特殊2部(部長ソン・ギョンホ)は、拘束したL副社長を足がかりに、サムスン電子のチョン・ヒョノ事業支援TF社長とイ・ジェヨン副会長に捜査の焦点を移していく方針だ。検察はL副社長がサムスンバイオ会計詐欺関連事項をチョン社長はもちろん、イ副会長にも直接報告した可能性についても調べている。検察関係者は「(会計詐欺という)本案の疑いに対する捜査が十分に進んでいなければ、証拠隠滅の疑いだけでは屈指の大企業の役員8人が拘束されなかっただろう」と述べた。