鴻海精密工業は11日、幹部9人で構成する「経営委員会」を発足させた。来年1月の総統選挙出馬に向けて退任意向を示している郭台銘(テリー・ゴウ)氏のワンマン体制から、集団体制への経営移行を進める受け皿となる。郭氏に代わる新たな董事長は、21日の株主総会で選出される予定だ。12日付経済日報などが報じた。

経営委員会は今後毎週開催され、重大議案は3分の2以上の賛成を経て、董事会に送られる。メンバーは、グループ内で半導体事業を担うサブグループ「S次集団」の劉揚偉総経理(京鼎精密科技董事長)など董事候補者4人とサブグループなどの責任者5人だ。劉総経理は、次期董事長の有力候補と目されている。

 経営委員会の発足は、鴻海が11日初めて開催した投資家説明会で発表されたもので、劉総経理が主宰した。郭氏は姿を見せなかった。



 一方、鴻海グループ副総裁で傘下のシャープ社長の戴正呉氏は、経営委員会のメンバーに含まれなかった。劉総経理は、戴氏は董事として引き続き経営に関わると説明した。

 劉総経理は、鴻海は非常に規模が大きく経営は複雑なため、多人数で事業を把握し、協調して対応する必要があると指摘。経営委員会は、従来も行っていた会議を正式に組織化したものと説明した。

 劉総経理はまた、郭氏は新たな董事会にとどまり、経営に関わると説明した。ただ、選挙情勢によって郭氏の董事会での役割は変化すると付け加えた。業界関係者は、郭氏は引き続き経営面で重要な役割を果たすとみている。

 鴻海の集団経営体制への移行は、台塑集団(台湾プラスチックグループ)の創業者、王永慶氏の例に倣ったとみられている。米中貿易戦争という環境の変化の下、郭氏が退いても迅速な意思決定ができる強みを維持し、同時に経営の透明性を高めることができるか注目される。

 鴻海は同日、在職1年以上の従業員の賃金を平均約7%引き上げると発表した。対象は鴻海精密工業の台湾で働く従業員で、グループ企業は含まない。最低でも月給が3,500台湾元(約1万2,000円)上がる。6月分から実施する。

 鴻海の台湾従業員数は6,000人以上。月間2,000万元余り、年間2億5,000万元の支出増になると推計されているが、同社にとって大きな負担ではないようだ。

 黄徳才財務長は、世界的に人材獲得競争が激化する中、台湾の優秀な研究開発(R&D)と技術人材の確保が目的と説明。郭氏の指示との見方は否定した。

 講演のため台中に赴いた郭氏は同日、賃上げは報道で知ったと説明。その上で、台湾は1社ではなく全面的な賃上げが必要で、自身が総統に当選すれば、産業転換や高度化を推進すると強調。企業がもうかれば、従業員の給与も自然と上がると述べた。ただ、一部からは賃上げは選挙でのアピール目当てとの批判も出そうだ。