有機EL用燐光発光材料メーカーのユニバーサルディスプレイコーポレーション(UDC、米ニュージャージー州)は、2019年通期の売上高見通しを、3.45億~3.65億ドルから3.7億~3.9億ドルに引き上げた。上方修正は1~3月期に続いて2度目。中国での有機EL生産拡大が寄与する見込みだ。

先ごろ発表した19年4~6月期の業績は、売上高が前年同期比2.1倍の1億1817万ドル、営業利益が同4.5倍の4866万ドルとなった。売上高は四半期ベースで過去最高となった。

 売上高1億1817万ドルのうち、発光材料の売上高は同2.1倍の7633万ドルと大きく伸びた。このうち、黄緑色を含む緑色発光材料の売上高は6020万ドル(前年同期は2570万ドル)、赤色発光材料の売上高は1600万ドル(同1090万ドル)で、両材料ともに販売が大きく増えた。



 売上高の地域別構成は、韓国が5876万ドルと約5割を占めたが、中国が5497万ドルと約47%を占めるまで拡大し、韓国に迫った。韓国のLGディスプレー(LGD)が中国広州で間もなく稼働予定のテレビ用8.5世代(8.5G=ガラス基板サイズ2200×2500mm)工場向けなどが寄与したもよう。また、BOE(京東方科技)とみられる中国FPDメーカーの売上構成比は前年同期の9%から24%に上昇し、BOEの生産量が増加してきたことをうかがわせた。

UDCは、有機ELの生産能力がインストールベースで19年末に17年末比で5割増加するとみており、これが増収に寄与する。下期にはLGD広州の本格稼働が収益に寄与してくると期待している。

 LGDの広州8.5G工場の月産能力は6万枚。8月中にも稼働させ、年末までにフル生産へ引き上げる。すでに韓国・坡州工場に適用しているMMG(Multi Model on a Glass=1枚のガラス基板でサイズの異なるパネルを生産する手法)を適用し、55インチや75インチの生産量を増やす。これにより稼働中の坡州E3、E4ラインとあわせて、19年末までに生産能力がほぼ倍増すると見込んでいる。

 BOEは、7月から四川省綿陽市の6G(ガラス基板サイズ1500×1850mm)工場「B11」から中小型フレキシブル有機ELディスプレーの出荷を開始したと発表した。総投資額は465億元(約7700億円)で、フル稼働時には月間4.8万枚の生産能力を備える見込みだ。BOEは四川省成都市で6G有機EL工場「B7」をすでに稼働しており、綿陽B11は同社にとって2つ目の6Gフレキシブル有機EL工場となる。これにより両工場で月間9.6万枚分の生産能力を備えたことになる。

 このほか、中国のビジョノックスが19年末に河北省固安で6G工場の本格稼働を開始する予定。月産能力は3万枚で、これに続く2番目の6G工場を安徽省合肥市に建設中だ。

UDCは研究開発面について、有機蒸気ジェット印刷技術「OVJP(Organic Vapor Jet Printing)」の成果としてパイロットラインで輝度1000ニット、LT95が5万時間以上の緑色有機ELパネルを試作した。7月に3つ目のチャンバーを導入し、これで今後RGBフルカラーのテストパネル試作に取り組む。

 青色燐光発光材料の開発については「すばらしい進歩があるが、これ以外に発表できることはない」と述べ、市場投入時期は明示しなかった。また、日韓の材料輸出管理問題に関しては「これまでのところ当社の業績に影響はなかった」と説明した。

 加えて、新たなホスト材料を開発中であることも明らかにした。顧客の地元企業であるローカルパートナーと開発し、UDCの燐光発光材料を補完し、最適な組み合わせを実現して発光材料の販売拡大に寄与させる考え。「今後数カ月以内にパートナーシップの一部を発表する」と述べた。

 これに関連した案件として、決算説明後には液晶材料大手の独メルクと有機EL材料の共同開発で協業すると発表した。UDCの燐光発光材料とメルクの輸送材料を結び付け、パネルメーカーに高性能の有機ELスタック技術を提供していく方針だ。