米アップルがスマートフォン「iPhone」の中核部品、有機ELパネルで中国最大手パネルメーカー製の採用に向け最終調整に入った――。

 8月21日に日本経済新聞が報じたこのニュース。アップルは固く口を閉ざしたままだが、国内外の複数のディスプレー関係者は「中国パネルメーカーからの有機EL調達に動いているのは間違いない」と口をそろえる。

 アップルが有機ELパネルの調達を検討しているのは、中国パネル最大手の京東方科技集団(BOE)。iPhone向けの試作パネルの出荷が始まっているもようだ。表示性能や歩留まり(良品率)など品質面がクリアされれば、2020年に発売されるiPhoneに採用されることになりそうだ。



 複数の業界関係者によると、アップルは20年に投入予定のiPhoneの新モデル3機種すべてに有機ELパネルを採用する計画を進めているという。18年の新モデルでは、有機ELの採用は3機種のうち2機種にとどまっている。3機種すべてに有機ELを搭載するに当たって、韓国のサムスンディスプレーとLGディスプレー、そしてBOEの3社から調達する考えのようだ。

 アップルの狙いの1つは、有機ELパネルのコスト削減だろう。英調査会社IHSマークイットの調査では、18年に投入された「iPhone XS Max」に搭載される6.5型の有機ELパネルの価格は、タッチパネルを含めたディスプレー全体で120ドル。製造コスト全体の3割弱を占めるという。韓国2社にBOEを加えた3社購買で、メーンサプライヤーであるサムスンディスプレーの値下げを促す思惑がありそうだ。

 もっとも、「BOE製有機ELパネルのiPhoneへの採用が確定したわけではない」と国内の大手ディスプレー企業の幹部は語る。課題は歩留まりなどの品質面を確保できるかどうかだ。「BOEの品質がサムスン並みに高まれば、20年のiPhoneはすべて有機ELになるだろうが、現時点ではどう転ぶか分からない」(同)

 BOEを含めた中国ディスプレー各社は、数年前から有機ELの投資を進めてきた。ただ、これまではサムスンディスプレー、LGディスプレーの2社が市場シェアの9割超を握り、中国勢は割り込めていなかった。

 ここにきて、BOEの歩留まりは急速に高まっている。複数の業界関係者は「今年の春時点で有機ELパネルの歩留まりは4割を超えてきた」と明かす。華為技術(ファーウェイ)など中国のスマホ大手への出荷を伸ばしつつあり、「歩留まりが6割を超えれば、サムスンに対してコスト面で優位性が出てくる」(ディスプレー関連のアナリスト)との指摘があるほどだ。

 BOEの有機ELがiPhoneに採用された場合、影響を受けそうなのが、経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)だろう。18年の「iPhone XR」には同社製の液晶パネルが搭載されているだけに、経営再建の足かせとなりかねない。

 「新商品だけがアップルのポートフォリオではない。(アップルは)旧モデルを含めて考えている」と、JDI幹部の1人は語る。仮に20年のiPhone新機種がすべて有機ELに切り替わったとしても、低価格な旧モデルの販売は続くため、JDIも一定規模の生産は維持できる可能性があるだろう。

 ただ、高付加価値パネルが搭載されるiPhone上位モデルでの失注は長期的には痛手だ。BOE製有機ELパネルの品質向上は、JDIの運命を左右するのは間違いない。