ほぼ100 %の効率で電気を光へ変換できる熱活性化遅延蛍光(TADF)*1)分子は、次世代の有機EL用材料として大きな注目を集めています。TADF現象が生じる鍵は、最低一重項励起状態(S1)と最低三重項励起状態(T1)と呼ばれる二つの状態での相互の「スピン変換」です。このため、TADFの材料研究では、「そのスピン変換をいかに効率的に起こすか」ということが一つの目標となっています。これまでに世界中でTADF分子のスピン変換に関する研究がなされてきました。しかし、そのスピン変換を媒介するであろうと予想される、肝心の「遷移状態」は未解明でした。

九州大学最先端有機光エレクトロニクス研究センター(野田大貴(当時博士後期課程3年)、中野谷一准教授、安達千波矢センター長ら)、産業技術総合研究所分析計測標準研究部門(細貝拓也主任研究員)、米国ジョージア工科大学(Jean-Luc Brédas教授、Xian-Kai Chen博士ら)の研究グループは、TADF分子におけるスピン変換過程の詳細なダイナミクス、特にその遷移状態を実験および理論計算の両面で解明することに成功しました。



研究成果のポイント

TADF現象を示す有機分子におけるスピン変換は、分子振動をきっかけとする電子状態変化により誘起される “特定の遷移状態” を経由して進行することを解明しました。さらに、その遷移状態は、その有機分子の部分分子構造*2)に由来する電子状態であることを解明しました。 本研究の意義は、解明したメカニズムを分子デザインにフィードバックすることで、有機分子におけるスピン変換特性(例えば発光寿命)を自在に制御できる可能性を示したことです。

本研究は科学技術振興機構(JST) ERATO「安達分子エキシトン工学プロジェクト」(JPMJER1305)、科研費(18H02047、18H03902)の支援を受けて実施されました。本研究成果は2019年9月3日(火)0時(日本時間)に、英国科学雑誌「Nature Materials」のオンライン版で公開されます。

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