電子機器受託生産大手、広達電脳(クアンタ・コンピューター)は4日、タイ子会社「QMB」を設立すると発表した。低単価のサーバーやグーグルのハードウエア製品の生産を移転するもようだ。米中貿易戦争を受けて、同業各社は既に東南アジアやインドでの生産拡大や計画に着手しており、同社のタイ投資表明で大手の計画が出そろった。5日付工商時報などが報じた。

クアンタのタイ投資額は、10億タイバーツ(約35億1,000万円)。観測によれば、地場の老舗家電・3C(コンピューター、通信、家電)組み立て業者、ワールド・エレクトリックから、タイ中東部のチョンブリー県で土地(約11万5,000平方メートル)と工場を取得する方針とされる。同社は、関連許可の申請中で、現時点では土地や工場取得の契約は結んでいないと説明した。

 クアンタの林百里(バリー・ラム)董事長は8月、米国の対中制裁関税率が10%を超えた場合、東南アジアは必須の選択肢であるが、場所の選定や手法は顧客の決定次第と述べていた。



 業界関係者は、グーグルとのハードウエア製品分野での協力深化が、タイを選択した理由と分析した。クアンタは、グーグルのスマートスピーカー「Google Home(グーグルホーム)」を受託生産する他、10月発表とみられる完全ワイヤレスステレオ(TWS)イヤホン「Pixel Buds(ピクセル・バッツ)」の2代目製品や、Pixelブランド初のスマートウオッチを受託生産するとされる。仮に中国での生産を続けた場合、制裁関税によりグーグルの売り上げにも大きく響く恐れがある。

 同社はこの他、台湾の林口本部(桃園市亀山区)そばで第3生産ビルを建設すると発表した。投資額は最大9億5,000万台湾元(約32億9,000万円)で、生産拡大と、増加する研究開発(R&D)人員向けオフィスに充てる。同社は半年以上前から高単価で少量生産のサーバー製品の台湾への生産移転を進めている。

 ハイテク業界では、既に川中~川下メーカーの間でも米中貿易戦争が長期戦となるとの認識が広がり、受託生産各社は東南アジアやインドへの生産移転を継続する。

 電子機器受託生産の同業、英業達(インベンテック)は、スマート端末のマレーシアへの生産移転を進めている他、サーバーに加え、ビジネス用ノートパソコンなどの台湾生産回帰を進めており、ノートPCの台湾生産台数は年初の3倍に当たる月間50万台以上に増加した。9月には台湾への20億元の投資、10月3日には桃園での新工場取得に約12億元を投じると発表した。

 この他、鴻海精密工業はベトナムとインド、和碩聯合科技(ペガトロン)はインドネシア、仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)はベトナム、緯創資通(ウィストロン)はフィリピンとインド、金宝電子工業(キンポ・エレクトロニクス)はタイとフィリピンでの生産拡大を進めている。