真空断熱ガラスを持つパナソニックの瓜生英一さんかつて薄型テレビの主役と期待されたものの、液晶との競争の末に消えたパナソニックのプラズマディスプレー。もはや過去の技術かと思いきや、実は形を変えて生き残っている。プラズマならではの特徴を活用したその製品とは――。

 プラズマの技術者だった瓜生英一さんが手に持つのは、薄い透明な板。2枚のガラスの間を真空にした高性能の断熱ガラスだ。厚さはわずか8ミリ。近く発売する新製品で、冷蔵ショーケースやビルの窓に使う。

 一般的な断熱ガラスは、ガスや空気を封じ込めて断熱材にする。熱を伝えない真空なら性能をさらに高められるが、真空状態を長く保つのは難しい。それを克服したのがプラズマの技術だという。





 瓜生さんは8年前、偶然立ち寄ったホームセンターで、「真空断熱」をうたった窓ガラスを見かけた。プラズマも電極や蛍光体を2枚のガラスで挟み、内部をいったん真空にする工程がある。「構造や製造方法が似ている」と気づいた。

 パナソニックがプラズマからの撤退を決める少し前だった。パネル価格はどんどん下がってゆくのに、その窓ガラスは「びっくりするほど高かった」という。

 「何とか技術を生かしたい」。瓜生さんはすぐに上司に提案。プラズマの研究施設や生産装置を引き継ぎ、2017年に真空断熱ガラスに参入した。テレビ生産で培った、大きなガラスから何枚ものパネルを切り出す「多面取り工法」も採り入れた。ガラス専業とはひと味変わった方法で、大量生産の道筋を開いた。

 まずは北米でショーケース用の製品を売り出した。今年4月からはガラス大手のAGCと協業し、欧州向けに住宅の窓ガラスの生産も始めた。欧州は冬の寒さが厳しいうえに古い建物が多く、既存の窓枠にもあう高断熱かつ薄いガラスが求められているという。

 真空断熱ガラスは技術のハードルが高く、手がける企業は少ない。瓜生さんは「プラズマの技術は液晶と違ってかなりアナログな部分がある。それを継承しているので、簡単にまねされない」と自信をみせる。今の売り上げは数億円だが、伸びしろは大きいという。

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