2020年の総合電機各社は、事業再編の巧拙がカギを握りそうだ。日立製作所と東芝は上場子会社中心のグループ再編に着手し、目指す企業像へ突き進む。一方、パナソニックは液晶パネルと半導体事業からの撤退を決めたが、事業再編は道半ばだ。2010年代は中国経済がけん引役となって自動車やスマートフォン、それらを作る工場設備の需要は右肩上がりだった。ただ、米中貿易摩擦が激化した19年に入って市場環境は一変し、隠れていた課題が顕在化した格好だ。

日立製作所は、19年末に上場子会社の日立化成を昭和電工へ、医療用画像診断機器事業を富士フイルムへ売却する決定を矢継ぎ早に下した。その背景には社会イノベーション事業を柱に据える上で、非中核事業を切り離す選択と集中戦略がある。





社会イノベーション事業とは、IoT(モノのインターネット)などデジタル技術を生かした社会インフラ事業と言い換えられる。鉄道や工場、ビル、街など“スマート”の冠の付く産業分野が主な対象。化学など素材事業はデジタル技術により付加価値を出しにくい分野だとの判断だ。

加えて、日立化成は半導体など電子材料に強く、需要変動の大きい半導体市況の影響を受けやすい。そういった波を嫌う日立製作所は2000年前後から半導体やハードディスク駆動装置(HDD)、中小型液晶パネルなどを次々と売却・事業統合して本体から遠ざけていった。

20年半ばにスイス・ABBの送配電事業買収も控える日立。19年で業績に悪影響を与えそうなリスクをほぼ取り除けたことで、20年から社会イノベーション事業という、目指す“本業”に集中できる体制が整ったといえる。

東芝は19年11月に上場子会社の東芝プラントシステムとニューフレアテクノロジー、西芝電機のTOB(株式公開買い付け)による完全子会社化を決めた。少数株主との利益相反の恐れがある日本独特の親子上場への批判に対応するのが一つの目的だった。

加えて、子会社3社は技術・製品開発を親会社とほぼ一体で行っており、完全子会社化により研究開発をさらに円滑に進める狙いもある。そのため、HOYAが19年12月に発表したニューフレアに対する敵対的TOBが仮に成立して東芝グループから外れた場合は、ニューフレアの研究開発力など企業価値が大きく損なわれる可能性がある。

東芝は19年に損失リスクが大きかった米国の液化天然ガス(LNG)事業を、仏トタルへ売却した。

日立と同様にリスク案件にけりをつけつつ、事業上で関係の深い上場子会社を取り込んでシナジーを拡大する。20年からCPS(サイバーフィジカルシステム)テクノロジー企業への進化を加速させたい考えだ。

パナソニックは対照的だ。19年にようやく液晶パネル事業と半導体事業の撤退を決めたが、同業他社と比べて事業再編の“周回遅れ”と言わざるを得ない。そして、設備投資負担の重いリチウムイオン二次電池事業などをまだ抱えており、収益力向上への道のりは20年も険しそうだ。

火力発電への逆風は世界的に強まるばかりだ。国内各社にとっても発電設備などの重電は、以前のように胸を張って「中核事業」とはいえなくなった。その中で、日立製作所は火力発電プラント事業から完全に撤退する。19年12月に三菱重工業と係争していた南アフリカ共和国の火力プラント建設で和解金を支払うとともに、火力事業統合会社の三菱日立パワーシステムズ(横浜市西区)の全株式を三菱重工へ譲渡する。

米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスも火力発電設備事業で大規模な構造改革を断行し、日立製作所の姿勢は世界の“脱火力”の潮流とも合致する。三菱重工はその流れに逆行して残存者利益を取る戦略をとった。どちらの判断が正しいかは評価まで少し時間が必要だろう。

一方で、火力発電が現在の社会生活を支える重要電源であることは間違いない。日本国内でもプラント新設は多く見込めないものの、既存の老朽化した設備の保守・サービス需要は今後拡大が予想される。IoTなどデジタル技術の活用範囲は広がりそうだ。

太陽光や風力など再生可能エネルギー関連の商機は20年も着実に増える。ただ、国内でのさらなる大量導入には太陽光などの発電変動を吸収する蓄電池などの調整力確保のほか、送電網の増強が不可欠になる。一朝一夕では進まない課題だが、難しいからこそ新たなニーズが生まれて技術革新を促すサイクルに期待したい。

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