4e7cfbbbe「BlackBerry(ブラックベリー)」が、またしても携帯電話の事業から撤退しようとしている。2016年にBlackBerryがスマートフォン事業から撤退したことを覚えている人もいるかもしれない。だが、のちに中国メーカーのTCLとライセンス契約を結び、TCLが「BlackBerry」というブランド名を使用することになった。

こうしてTCLは、「BlackBerry」ブランドの製品を大量に市場に投入した。QWERTY配列のハードウェアキーボードを備えたBlackBerryらしい機種だけでなく、既存のTCL製スマートフォンの名称を変えただけの安易なモデルもあった。

しかしどうやら、TCLによるブラックベリー再生計画はうまくいかなかったようだ。TCLもまた、BlackBerryブランドの利用を打ち切ろうとしているからだ。





BlackBerryブランドの携帯電話を展開するBlackBerry Mobileは2月4日、あるメッセージをTwitterで投稿した。友好的な表現ではあったが、要するに提携関係の解消を告げる内容だった。

TCLが結んでいるBlackBerryのライセンス契約は2020年8月31日で終了し、それ以降は両社が違う道を進むという。ライセンス契約の終了後、TCLは「BlackBerry端末の設計、製造、販売に関するすべての権利を失う」ことになるが、過去に販売した端末のサポートは22年8月31日まで継続する。

いまのところ、ブランドを引き継ぐメーカーは出てきていない。つまり「BlackBerry」と名が付く携帯電話は、これで市場から完全に姿を消してしまうようだ。

スマートフォンメーカーがゆっくりと市場から姿を消していくさまを、これまで何度も目にしてきた。しかし今回のようにライセンス契約の終了となると、これまでとは違った姿の消し方になるだろう。つまり、一気に断ち切ったように製品が消えることになるのだ。

TCL製のBlackBerryに在庫があったらどうなるのだろう。砂漠にでも穴を掘って埋めるのだろうか。

2000年代初頭、BlackBerry(当時の社名はリサーチ・イン・ モーション=RIM)はモバイル端末の大手メーカーだった。BlackBerryの携帯電話はQWERTY配列のハードウェアキーボードを装備しており、プッシュ式通知を重視する設計だった。このため絶えずどこかと連絡をとっていなければならないビジネス層に、大いに受けたのである。

スマートフォンの通知が気になって仕方がないという昨今の傾向も、元はといえば当時のBlackBerryまでさかのぼることができる。当時の管理職も端末をチェックすることを止められず、依存症めいているので「クラックベリー」(クラックはコカインの隠語)と呼ばれていたほどだ。

そこにiPhoneが登場してきたことで、すべてが変わった。ボタンだらけのハードウェアキーボードは必要ないし、さまざまな用途に使えるタッチスクリーンとソフトウェアキーボードが主流になることを、ユーザーに告げたのである。

アップルがモバイル市場をひっくり返したわけだが、BlackBerryは有効な対抗策を何ひとつ打ち出せなかった。「いまそれをやっても遅すぎるし、中途半端だ」という策が続いたのだ。

BlackBerryは既存のOSに手を入れ、フルスクリーンの「BlackBerry Storm」を2008年に発売した。しかし、旧式のOSを使った場当たり的な製品でしかなかった。

iOSとAndroidへのまともな対抗策として初めて投入したOSが「BlackBerry 10」で、2013年のことだった。同時に新機種「BlackBerry Z10」も発売したが、そのころにはアップルとグーグルのアプリによるエコシステムが市場を席巻していた。両社のOSはアプリが使えたが、Blackberry 10では使えなかったのだ。

BlackBerryでアプリが使えるようになったのは、15年発売の「BlackBerry Priv」になってからだった。この機種からブラックベリーはOSヴェンダーであることをあきらめ、Androidへとシステムを移行した。

ところがBlackBerry Privは、窮屈で薄っぺらいハードウェアキーボードの付いた、高価なわりに出来の悪いデヴァイスだった。ここにきてユーザーは、普通のAndroidスマートフォンを買えばいいことに気付いてしまったのである。

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