アジア通貨危機のさなかの1999年第4四半期(10-12月)、韓国経済に歴史的な事件が起きた。企業価値を意味する時価総額の首位が韓国電力公社からサムスン電子に交代したのだ。その後、2000年に一時的に韓国通信(現KT)にその座を譲ることはあったが、サムスン電子はこれまでずっと「韓国ナンバーワン企業」の座を守り続けている。 

 結論から言えば、通貨危機がチャンスだった。韓国が金をかき集めて生存を心配していたその当時、世界経済の成長軸は鉄鋼、自動車、造船など鉄に象徴される旧経済からコンピューター、通信など半導体に代表される新経済へと完全に変わった。その流れにサムスン電子はうまく乗った。サムスン電子が巨額の赤字を出し、国内外に笑われながらも事業を推進した半導体部門が韓国を養い始めた。

 大きな経済危機が過ぎると、常に巨大企業が誕生してきた。経済の枠組み自体の転換に即応できた企業だ。デジタル時代を迎え、そうした傾向がさらに強まっている。トレンドの変化は急だからだ。





 韓国の輸出企業は唯一日本で力を発揮できない。そんな日本で圧倒的なトップシェアを握る企業が韓国ネイバーの子会社LINEだ。韓国国内でのカカオトークのように、日本のメッセンジャー市場の80%を掌握している。韓国人がメッセンジャーで連絡してほしいときに「カトクして(カトクはカカオトークの略)」と言うように、日本では「LINEして」と言う。これは2011年の東日本大地震直後、日本社会の危機に切り込んでいったからこそ可能だった。当時ネイバージャパンの社員は電話や携帯メールによる通信網が寸断されて苦労した。ところがインターネットは使用可能だった。このため、韓国でメッセンジャーを使いこなしていた社員同士は連絡ができたが、ほとんど使っていなかった日本人社員とは連絡がつかなかった。ネイバーはそこに着目し、わずか1カ月でLINEをつくり、市場の先取りに成功した。

人材を育てるホンダ競わせるサムスン [ 佐藤登 ]
人材を育てるホンダ競わせるサムスン [ 佐藤登 ]

中東呼吸器症候群(MERS)が韓国を襲った2015年はインターネット通販元年となった。ネット通販はデジタルに慣れた一部から大衆へと広まった。人と人が会う必要がない非対面文化の始まりだった。韓国電子商取引大手、クーパンの売上高は2014年の3485億ウォン(約304億円)から15年には1兆1338億ウォンに激増した。クーパンはその後も成長を続け、昨年の売上高が大手量販店を上回るほどだ。

 現在の新型コロナウイルスによる事態でもチャンスを模索する企業がある。数年にわたり、新薬が臨床試験を通過せず、体面を失った韓国のバイオ産業が活気づいている。SEEGENE(シージェン)は新型コロナウイルスの診断キット1,000万個の輸出を達成した。サムスンバイオロジクスは米製薬会社が治療剤を開発した段階で受託生産を行う契約を結んだ。受注規模は単一案件としては最高の4418億ウォンだ。

 韓国の通信事業者の技術競争力も高まっている。通信3社は昨年、世界に先駆けて第5世代(5G)移動通信システムのサービスを開始した。今年が2年目だ。他の国々は新型コロナウイルスで経済がストップし、5Gサービスを始めることすらできずにいる。システムの運営ノウハウに差が開いた格好だ。各通信キャリアはコロナさえ沈静化すれば、すぐにも5G技術を輸出しようと機会をうかがっている。

 コロナで成長が見込まれる世界のウェブトゥーン(デジタルコミック)市場で躍進する韓国企業もある。ネイバーのウェブトゥーンの月間ユーザーは全世界で6200万人だ。カカオのウェブトゥーンサービスは日本で黒字転換に成功した。

 今はつらくない人などいない。突破口は見えてこない。しかし、希望までついえてはいない。第2、第3のサムスン電子になるために種をまき、チャレンジする企業がさらに多く登場することを願っている。

※記事の出典元はツイッターで確認できます⇒コチラ