unnamedテレビ向け大型液晶パネルの供給過剰が終わりを迎えそうだ。中国の生産拡大で採算が悪化し、2020年に韓国メーカーが相次ぎ生産から撤退することを決めたためだ。長く供給過剰が続いたが、21年には需給が締まり、価格の下げ幅が縮小するとの見方が強まっている。同時に中国が6割のシェアを握り、市場の構図は激変する。

米調査会社のディスプレイサプライチェーンコンサルタンツ(DSCC)がテレビ向けパネル(第7世代以上)の需給ギャップ(生産能力から需要面積を引いた比率)を調査した。21年の世界のテレビ向けパネルの需給ギャップは6.9%と、20年見通しの19.8%から12.9ポイント改善する見通しだ。裁断ロスなどを勘案し、テレビ向けパネルは需給ギャップが5~10%が均衡点といわれている。韓国サムスン電子などの生産撤退表明を受け従来予測を見直した。





韓国大手は相次ぎテレビ向けパネルから撤退する。サムスン電子は20年後半にも韓国中部の湯井(タンジョン)工場と、中国江蘇省の蘇州工場の生産ラインを停止。最大手のLGディスプレー(LGD)も韓国での生産を段階的に減らす。

液晶パネル市場は長く供給過剰に陥っていた。中国メーカーが地方政府の補助金を使い、設備増強と生産拡大を進めたためだ。中国の生産能力は19年の1年間で4割増えた。これは世界平均の13%を大きく上回り、中国の突出ぶりがうかがえる。

中国勢の増産で、液晶パネル業界は激烈な価格競争が続いた。主力の55型の大口価格は17年春に1枚220ドルだったが、5月は106ドルと半値以下になった。各社の収益の悪化は深刻で、LGDの20年1~3月の連結営業損益は3620億ウォンの赤字(前年同期は1320億ウォンの赤字)だった。

韓国メーカーの撤退を受け、今後は需給バランスが安定する見込みだ。22~24年の需給ギャップは6%前後の見通し。一部で中国のラインがフル稼働するが、これまでの増産体制は一服する。

液晶パネルは投資の意思決定からフル稼働まで約2年かかるとされるが、市場には「20年は大型の投資予定は見当たらない」との声が多い。中国政府の投資の重点が有機ELなどに移り、液晶向けの補助金がなくなるためだ。

同時に液晶パネルの値下げ幅も縮小する見通しだ。DSCCの田村喜男アジア代表は「21年から価格が上昇に転じ、損益も黒字化する可能性が高い」とみる。

韓国大手の撤退で、21年の国別シェアは中国が6割まで拡大する。18年に4割だった韓国は15%と、台湾と並ぶ水準まで落ち込む。パネル市場は競争の激しい時代から、中国1強の時代へと変わりそうだ。