posing-yellow-176830184 「勝算がなければ発表しない」。6月30日にヘルスケア関連事業への参入を発表した、経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)。オンラインでの記者会見に登壇したスコット・キャロン会長はこう意気込みを語った。

 JDIはこれまで医療分野ではディスプレーを供給してきたが、センサー事業を拡大する。ディスプレーの薄膜回路技術を応用した身に着けられる生体センサーや、画面を触らずに操作できるセンサーを内蔵したディスプレーを供給していく。 ヒトゲノム解析関連事業への参入を検討していることも明らかにした。

ゲノム解析情報と生体センサーの情報を組み合わせて、リアルタイムでの健康管理などのサービスを提供していく考え。パートナー企業との検討を進めており、ビジネスの枠組みが固まり次第、「できる限り早い段階で説明したい」(菊岡稔社長兼CEO)とした。





20年3月期は1014億円の最終赤字
 新規事業の創出を急ぐ背景にあるのは業績の厳しさだ。同日発表した20年3月期の連結決算は最終損益が1014億円の赤字。独立系投資顧問のいちごアセットマネジメントの支援で債務超過は回避されたが、最終赤字は6期連続となった。大手顧客である米アップルなど、需要の変動が激しいスマートフォン用ディスプレーへの過度な依存から脱却できずにいる。

 JDIは、白山工場(石川県白山市)の売却による資産の適正化や、設計の共通化などのコストダウンを加速して収益性を高める考え。だが、キャロン会長が「新型コロナウイルスで事情が変わった」と話す通り、スマホや車載向けディスプレーはコロナ禍で需要が落ち込んでいる。20年4~6月期は70~90億円の営業赤字を見込むほか、「ターンアラウンド元年」と位置付ける21年3月期の営業黒字化の目標も事実上撤回した。

 こうした中、スマホと車載に次ぐ事業の柱として期待を寄せるのがヘルスケア領域だ。菊岡社長は「(工場などの)アセットドリブンではない付加価値を追求できる分野。将来的に利益で100億円を稼ぐ蓋然性が高い」と語る。

 もっとも、JDIがサービス展開までを志向するのは今回が初めてではない。18年にはディスプレーを使った最終製品ビジネスと、販売後も継続的に収益を生み出すリカーリング事業への参入を発表。ディスプレーを内蔵することで、カメラで撮影した自分の後ろ姿を確認できる「後ろ鏡」や、シールド部分に速度メーターや位置情報を表示できるヘルメットは業界で話題となった。

 だが、経営危機が深刻化する中、一連の取り組みはトーンダウン。19年5月には旗振り役の経営幹部が退任したこともあり、脱売り切り型を目指したビジネスの取り組みの多くは立ち消えとなっている。

 ヘルスケア事業への参入は、「いつか来た道」をたどってかけ声倒れに終わるのか、JDIを危機から救うのか。ディスプレー専業だったJDIがサービス領域でも戦える勝算を具体的に示していく必要がある。

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