1_sテレビ向け液晶パネルの取引価格が3カ月ぶりに上昇した。指標品の6月の大口取引価格は前月比約2%前後高い。新型コロナウイルス対策で欧米など各国政府が進める給付金支給の後押しもあってテレビ需要が回復してきた。年末商戦に向けテレビメーカーのパネル調達も増えている。

今後数カ月はパネル価格の上昇が続くとの声がある。 指標となるオープンセル(バックライトがついていない半製品)の大口価格は、大型テレビ向けの55型が前月比2ドル(2%)ほど高い1枚108ドル前後。32型も2ドル(6%)高い1枚36ドル前後まで上昇している。上昇は3カ月ぶりだ。

新型コロナのまん延で、3月ごろから欧米を中心に家電量販店など小売店の休業が相次いだ。大きくて高価なテレビは店頭で実物を見て買う場合が多く、休業が販売減に直結していた。





これを受けパネル価格も4月から下落した。パネルメーカーは収益が悪化し、一部メーカーが6月からテレビメーカーに値上げを要請していた。

足元のテレビ販売は復調しつつある。後押しするのが各国政府による給付金だ。米国では失業給付の拡大や給付金最大1200ドル(約13万円)などの現金給付が進んでいる。米国の4月の個人所得は前月比で10.5%増え、コロナ前を上回った。

外出自粛や在宅勤務の拡大で家にいる時間が長くなったことも一因だ。特に小型テレビは寝室や子供部屋などに設置する2~3台目として人気がある。米国では「量販店の店頭にテレビがないとの声も聞く」(国内アナリスト)。

日本でもテレビ需要は回復傾向だ。調査会社BCN(東京・千代田)によると、全国の主要な家電量販店などでの液晶テレビ販売台数は、6月第4週が前年同期比43%多かった。5月第1週から前年実績超えが続き、緊急事態宣言の解除が取り沙汰された5月中旬ごろから販売が顕著に伸びている。第一生命経済研究所の藤代宏一氏は「特別定額給付金の10万円が耐久消費財に向かっている可能性がある」とみる。

市場では、パネル価格は「今後数カ月上昇が続くのではないか」(米調査会社DSCCの田村喜男アジア代表)との声も出てきた。7~9月はクリスマスや年末商戦に向けたパネルの需要期に入る。業界の想定よりテレビ販売が好調なため、店舗の在庫が減りテレビメーカーの生産も上向く見込みだ。

テレビ向けの生産撤退を決めた韓国のパネルメーカーが年末に向け徐々に稼働を落としており、供給が減りつつあることも価格の下支え要因だ。

ただ「年末商戦需要を先食いしている可能性もある」(半導体商社)と需要の持続に慎重な見方もある。新型コロナは新興国での感染拡大だけでなく、欧米や日本でも第2波が押し寄せつつあり、上昇の勢いがどれだけ続くかは見通しにくい。


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