有機EL用燐光発光材料メーカーの米ユニバーサルディスプレイコーポレーション(UDC、米ニュージャージー州)は、開発してきた有機蒸気ジェット印刷技術「OVJP(Organic Vapor Jet Printing)」を事業化するため、100%出資子会社「OVJP Corporation」を設立すると発表した。

4K/8Kといった高精細の大型テレビ用有機ELパネルの製造装置として実用化を目指していく。  OVJP社はカリフォルニア州シリコンバレーに本拠を構え、CEOにはFPD(Flat Panel Display)検査装置メーカーの米フォトンダイナミックス(2008年にオルボテックが買収)で25年以上にわたって装置の大型化などを手がけた経験を持つJeff Hawthorne氏が就任する。

 テレビ用の大型有機ELパネルの製造では、有機ELの発光層を形成する技術として、(1)オープンマスクを用いた真空蒸着、(2)インク状の発光材料を用いたインクジェット印刷技術がある。





 (1)は、現在世界で唯一、テレビ用有機ELパネルを量産している韓国LGディスプレー(LGD)が採用している。赤や青の発光層、これらに電子を供給する輸送層などを縦方向に複数積層するWOLED構造を作り込むために真空蒸着装置が使われている。

 (2)は、インクジェットプリンターと同様の印刷技術。日本のJOLEDが5.5世代(1300×1500mm)ガラス基板を用いた量産ラインを石川県能美市に整備し、モニター用などの中型有機ELパネルを量産しているが、テレビ用大型パネルの量産技術としては研究開発の段階にある。ちなみに、インクジェット印刷装置メーカーとしては、JOLEDが量産ラインに採用しているパナソニック プロダクションエンジニアリング、LGDや台湾AUOなどに納入実績がある東京エレクトロン、有機EL薄膜封止技術に実績を持つ米Kateevaが供給している。

OVJP技術は、ガスを用いたインクジェットで低分子材料を成膜するダイレクトドライ印刷技術で、(1)(2)に次ぐ3つ目の大型有機ELパネル製造技術となる。(1)は成膜にメタルマスクが必要だが、OVJPは不要。また(2)は有機EL発光材料をインク化する必要があるが、OVJPは無溶剤で製膜できるのが利点。UDCは、プリンストン大学のStephen Forrest教授らのチームと研究プログラムを組んで、研究開発を長年続けてきた。

 18年7~9月期に試験用プロトタイプ装置のチャンバーを導入。19年に開催されたディスプレーの国際学会「SID」でUDCは、OVJPの成果を公表し、パイロットラインで輝度1000ニット、LT95(有機EL素子の初期発光強度が5%減少するまでの時間)が5万時間の緑色有機ELパネルを試作している。19年7月には3つ目のチャンバーを導入し、これでRGBフルカラーのテストパネル試作に取り組んでいた。

 現在はフルカラー4Kパネルの試作を推進中。OVJP社ではニュージャージー州ユーイングでも研究開発を継続する予定で、これらをベースにOVJP技術を商用の機器システムに拡張していく。

 CEOに就任するHawthorne氏は「OVJPは有機ELテレビの製造を変革し、有機ELの普及をさらに促進する大きな可能性を秘めている」と期待を述べた。

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