TV market jeita1_s市場動向調査会社Informa/Omdia主催の「第39回 ディスプレイ産業フォーラム」において、Omdiaディスプレイ部材担当調査マネージャーの宇野匡氏は、ディスプレイ部材市場動向について、新型コロナの影響と、韓国勢の液晶パネルからの撤退により、状況に変化が生じているとした。

まず懸念される新型コロナウイルスの部材市場への影響についてだが、新型コロナの終息にはワクチンと治療薬の確立が必要だが、それがいつ実用化されるのかといった予測は難しい。また、新型コロナが終息したとしても、新たな未知のウイルスが発生しないとは限らず、これからの社会は、そうした未知のウイルスに対応できるように変化していくことが求められ、併せてアプリケーションやデバイスも変化していくことが求められる。

ただし、どのように変化していくかを予測することは困難であり、そうした変化がディスプレイの部材にどのような影響をもたらすか、という点について踏まえると、市場の予測は難しいものとなっているという。 そうした状況の中、現状の大きな傾向としてはIT関連のディスプレイが好調ではある一方、テレビなど多くのディスプレイが大幅なマイナス成長と予測されている。新型コロナ以前はスマートフォン(スマホ)をはじめとするモバイルデバイスの需要が好調であった。

しかし、新型コロナ後、人々は外出を控えて家に閉じこもる傾向にあり、モバイルデバイスの需要は大幅な減退となっている。こうした社会や人々の生活の変化は、従来の需要が減退し新たな需要が創成される可能性があることから、部材メーカーにとっては、リスクであると同時にビジネスチャンスともなるとする。

ディスプレイの面積需要の70%は液晶テレビが占めている。これまで、ディスプレイの面積需要がマイナス成長に陥ることはなかったが、2020年はテレビ需要の大減速で、データ集計以来初となる前年比2%減とOmdiaでは予測している。かつては、出荷枚数の減少を、平均画面サイズの大型化で補填することで成長を維持し来ていたが、そもそもテレビが世界中で売れないという状況に至っては、台数を伸ばす、画面サイズを大きくするといった手法がまったく通じず、新型コロナの影響が大きいことがうかがえる。

また、2023年以降の面積需要も、さまざまなアプリの飽和により、かつてのような成長は望めない予測となっているとしている。





宇野氏は、デイスプレイの歴史を振り返り、もはや日本、韓国、台湾が収益を伸ばせる時代は去り、これからは中国での大型投資に期待するしかないとした。

かつて、CRTがディスプレイの主流であった2000年~2005年においては、中国のCRTメーカーが政府の補助をテコに大型投資を開始し、2005年以降、中国が最大の生産能力を持つこととなった。その結果、日本・韓国・台湾のディスプレイメーカーはCRT事業で収益を上げることが困難となり、フラットディスプレイ(FPD)である液晶ディスプレイやプラズマディスプレイへの投資と開発へと転身。中でも液晶ディスプレイメーカーは投資と技術開発の好循環により成長を遂げることに成功した。

2010年以降、中国で継続する液晶パネルへの大型投資はCRTと同じ状況を生み出しているという。日本・韓国・台湾のパネルメーカーはすでに液晶に対する大型投資を停止しており、さらに韓国メーカーは大型液晶ラインそのものの閉鎖を進めている。中国での大型投資が継続されることにより、韓国・台湾メーカーは収益を上げることが困難になり、有機ELディスプレイやミニLEDあるいはマイクロLEDなどの新規技術への投資や開発を進めることで、ディスプレイ事業の将来を切り開こうとしている。とはいえ、Samsungはスマホ向け有機ELディスプレイ事業で成功しているが、テレビをはじめとする大型ディスプレイでの有機EL開発は難易度が高く、低分子RGB有機ELが使えないことや、材料の寿命が短いなどといった課題が残されている。一方のマイクロLEDも実装技術のコスト高が問題となっているという。

日本・韓国・台湾のディスプレイメーカーが難易度の高い次世代技術の開発を進める一方、中国での液晶パネルに対する大型投資は継続しており、そのパネル価格は下落し続けることとなる。そのため、老舗のディスプレイメーカーであっても、次世代ディスプレイの開発に成功しない限りは、将来的に事業の継続が困難になると予測されるという。そのため、部材メーカーにとっては、自社の顧客が日本・韓国・台湾のメーカーから中国のメーカーに移行していく状況が継続することになるという。

部材の中でも注目度の高いガラス基板だが、その生産能力は第10.5世代(G10.5)を除くと、中国での投資は積極的とは言えず、パネルの生産能力に関する地域格差が生じているという。その結果、ガラス基板メーカーは関税を払って、日本、韓国、台湾からガラスを輸入することとなっているとする。

サプライチェーンにおいては、従来はCorningがSamsung向けとしては独占的なシェアを持っていた、また日本電気硝子(NEG(はLG Displayにおいて独占的な立場を有しており、この2社は韓国で高いシェアを誇っていた。しかし、韓国の2大パネルメーカーは大規模な液晶ラインについて2019年から閉鎖を進めており、CorningとNEGは韓国の生産能力を中国へと振り向けることとなる。一方、AGCは韓国でのシェアが低いことから、韓国のパネルメーカーによるライン閉鎖で受ける影響は少ないとみられるとする。

また、G10.5については、フュージョンガラスの輸送は困難であり、基本的にCorningはバイプラントで窯を建設している。しかし、G8.5以下の世代のガラス基板については大手3社ともに、基本的に中国での生産能力はいまだに小さく、特にCorningは北京に2窯を所有しているのみである。Corning、AGC、NEGのいずれもが米国ならびに日本の企業であることから、中国への投資はリスクがあり、いまだに積極的とは言えないためであり、関税を支払ってでも既存の日本・韓国・台湾の工場を維持する方針を掲げている。ただし、NEGのみが日本の古い窯をリストラし、2021年に厦門に3窯を新設する計画があるという。

偏光板は中国メーカーの新規参入が続いており、その結果生じた価格下落により利益確保が難しい事業となってきている。そのため、例えばLG Chemicalは2年前に偏光板事業の売却を計画し、さまざまなメーカーと交渉を進めてきており、ようやく2020年6月になって、中国の電池部材メーカー「杉杉(シャンシャン)グループ」にテレビやスマートフォン向け液晶パネルの偏光板事業を売却することが決まった。杉杉の株主総会での承認を得て、まず杉杉が70%、LG Chemicalが30%出資する合弁会社を設立し、3年後をめどに残りの持ち分も杉杉側に売却する計画だという。かつて、最大の面積シェアを誇っていた同社が偏光板事業を売却することにより、偏光板生産は一気に中国メーカーにシフトすることとなる。

一方、偏光板に使用されるTACフィルムをはじめとする構成フィルムは依然として日系メーカーのシェアが高い状況が続くと見られている。例えば、PETフィルム、アクリルフィルム、COPフィルムはほぼ日系メーカーが独占している。中国偏光板メーカーのシェアが上がったとしても当面は日系メーカーの構成フィルムに関する独占状態は変わらないと予測される。

韓国パネルメーカーのライン閉鎖により構成フィルムによっては一時的に需要が減退することが見込まれるが、長期的には大型テレビにはNonTAC偏光板が使用される傾向があることから、需要が高まることが予測される。また、これらの構成フィルムを製造するラインを新規で立ち上げるためには、クリーンルームも含めて最低百億円規模の投資が必要であり、1工場が立ち上がるだけで相当数の生産能力を確保できるため、新規参入の障壁は高いという。

なお、韓国のパネルメーカーに対しては、LG Chemicalが高いシェアを誇ってきたが、Samsungに対しては住友化学が比較的高いシェアを確保していた。その住友化学はすでに中国で偏光板ライン生産に対する投資を進めており、中国パネルメーカーに対するシェアを高めることに成功しているという。

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