sharp 000001-PB1-2シャープがジャパンディスプレイ(JDI)から買収した白山工場(石川県白山市)が、稼働再開に向けて動き始めた。有機ELパネルを採用したスマートフォンが増えるなか、従来型の液晶パネルを生産する白山工場は過去の遺物にもみえる。

だが株式市場では「キャッシュを生む『金の卵』になるかもしれない」との期待が出ている。逆張り投資に勝算はあるのか。

JR金沢駅から西へ車で30分。工場が集積する工業団地の中でもひときわ目立つ、延べ床面積17万平方メートルに迫る巨大な施設がある。JDIが2016年に立ち上げ、19年7月から生産停止している旧JDI白山工場だ。10月上旬に現地を訪れると、建物には前の持ち主である「JDI」の看板が残っていた。

その内部に目を向けると、シャープの傘下で着実に前に進み始めている。10月1日に買収が完了するとシャープは直ちに100~200人規模の技術者を白山工場に派遣。この工場はまだ稼働から日が浅く、設備は新しさを保っている。シャープは年内にも再稼働し、米アップルのスマホ「iPhone」向け液晶パネル生産を集約する。






アップルが23日から投入している新機種「iPhone12」はすべて有機ELパネルを採用している。その中での液晶パネル工場への投資。株式市場の理解を得られるかについては、シャープ幹部にも不安があったようだ。

市場の見方は違った。みずほ証券の中根康夫シニアアナリストは「白山工場の取得はシャープにとってポジティブ。アップルとの関係が強化され、受注も増えそう」と評価する。廉価版の「iPhoneSE」など液晶パネル搭載モデルも人気が続き、当面は液晶パネルの需要が見込めるからだ。

買い取った条件も評価につながった。白山工場の土地・建物の金額は3億9000万ドル(約400億円)。JDIがアップルから受け取っていた前受け金の一部を肩代わりする形で取得し、買収時点ではキャッシュの流出はない。アップルから請われた形で交渉が始まった買収案件で「赤字では絶対受けない」(シャープ幹部)と譲歩を引き出せたもようだ。工場取得を発表した8月28日を含む5営業日でシャープ株は約11%上昇した。

実際に金の卵にしていくためには、越えるべきハードルがある。鴻海精密工業の傘下に入った16年以降、フリーキャッシュフロー(純現金収支、FCF)がプラスになったのは17年3月期の1度だけだ。

みずほ証券の中根氏は「損益計算書の利益水準は改善した」としつつも、「工場の稼働率を重視する企業文化がキャッシュフローの悪化につながっていた。在庫を減らして今期にも黒字にすべきだ」と指摘する。一般に、稼働率を高めようとすると原材料を多く仕入れることになり、在庫として滞留するケースが多い。これがキャッシュフローの悪化を招く。

在庫が何日かかって1回転するかを示す「棚卸し資産回転日数」の20年3月期実績は、ソニーの96.9日、パナソニックの115.1日に対し、シャープは132.4日だった。ここ数年は一貫して2社より長い。

シャープの自己資本比率は20年3月末時点で15%にとどまる。大型投資のために銀行借り入れや社債発行など負債を積み増せる局面にはない。そのため、シャープは10月1日にディスプレー事業を「シャープディスプレイテクノロジー」として分社化し、外部から出資を含めた資金調達を視野に入れる。

次世代ディスプレーの覇権を握れるかは未知数だ。ディスプレーの調査会社、米DSCCの田村喜男アジア代表は「顧客とどこまで踏み込んで次世代ディスプレーを見据えた話ができているのかが焦点」と話す。

今回の白山工場買収では、シャープはアップルから安定した収入源も確保したようにみえる。今後も競争が激しいディスプレー市場で勝負していくには、営業や生産の両面で効率よくキャッシュを稼ぐ知恵を絞る必要がある。

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