有機ELテレビが好調だ。10月の販売台数前年同月比では、234.6%と2倍以上の伸びを示した。液晶テレビも含めた薄型テレビ全体も146.0%と好調だが、それを上回って有機ELテレビの販売が拡大している。昨年10月は、消費税増税の実施に伴って販売が落ち込んでいた。この反動で今年の10月は、多くの製品カテゴリで前年比が跳ね上がる傾向があるものの、有機ELテレビは昨年10月時点でも116.3%と前年を上回っていた。特殊事情を考慮した上でも伸び率は大きい。

 10月時点で、薄型テレビ全体に占める有機ELテレビの台数構成比は7.2%。9割以上を液晶テレビが占める市場の中で、1割に満たない少数派だ。伸び率が大きくなっている理由でもある。しかし、有機ELテレビは税別平均単価が23万7000円と液晶テレビの3.3倍もする高価な製品群。販売金額構成比では、すでに20.1%を占めており、大きな市場に成長しつつあることが分かる。視野角が広く黒が締まった色鮮やかな発色と、薄型で軽量というメリットで、高価ながらも徐々に消費者の支持を広げつつある。





 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って販売が拡大している、という側面もある。家で過ごす時間が増え、テレビを筆頭に、家庭にあるディスプレイの重要度が増した結果、鮮明な映像が楽しめる製品を求める傾向が出てきている。2011年の地デジ化以降、ここ数年続いている買い替えの動きに有機ELが選択肢に入ってきている。国民全員に配布された10万円の特別給付金も、背中を押す効果をもたらした。
  テレビ市場で2割以上のシェアを握りトップを走り続けている、シャープの参入も大きい。「液晶のシャープ」といわれ、液晶テレビにこだわり続けてきた同社だったが、この5月、満を持して有機ELテレビに参入。ラインアップもまだ少なく2モデルのみでシェアは1割前後だが、11月にはさらに48型の小型モデルも投入し、販売の上積みも期待できる。ようやく国内主要メーカーが出そろったことで、選択肢が広がり、市場が活性化している。

 現在有機ELテレビで首位を争っているのは、ソニーとパナソニックだ。この1年の動きをみても、激しい首位の争奪戦を繰り広げている。10月はソニーが33.7%、パナソニックが31.0%と僅差でソニーがトップを獲得した。BRAVIAの55インチモデル「KJ-55A8H」が頭一つ抜けた売り上げを示している。10月の前年同月比で最も伸びたのは、240.0%でパナソニック。7~9月まで前年を割れていたが、ようやく復活してきた。3位争いで再び頭角を現してきたのが、LGエレクトロニクス。17.7%で上位2社を追う。税別平均単価16万4000円の手頃さでシェアを広げている。
 
 「テレビ離れ」が叫ばれる昨今だが、正しくは「地上波テレビ離れ」といい換えるべきだろう。ネット動画やストリーミング放送サービスのディスプレイやゲームのディスプレイとして、ハードウェアとしてのテレビの用途が広がっている。映像表現力の豊かさで有機ELテレビが付加価値を認められつつある。テレビの次の付加価値は、恐らく現状から1歩も2歩も踏み込んだ、本格的なオンライン対応、ということになるだろう。

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