lcd share 2020FFE001-PB1-2中国の液晶パネル2強が工場買収を競っている。政府の補助金政策の転換を受けて新規投資はやめ、再編を通じた規模拡大に移行した。韓国勢が有機ELなどにシフトすることもあって、中国製のシェアは近く7割まで高まる見通しで、寡占による「残存者利益」を得る段階に入りつつある。

液晶パネル中国最大手の京東方科技集団(BOE)は中国国有の電機大手、中国電子信息産業集団(CEC)グループが保有する液晶パネル工場2カ所を1900億円で買収する方針だ。生産能力は2~3割増える見通しだ。

BOEは「パネル業界で世界をリードするという成長目標にそぐうものだ」と狙いを説明する。主にテレビに使う大型液晶の市場シェアは2019年時点で世界2位だったが、近く韓国LGディスプレー(LGD)を抜いて首位に浮上する可能性が高い。





中国2位の華星光電(CSOT)は江蘇省にある韓国サムスン電子との合弁工場で、サムスンの持ち分を関連工場を含め1100億円で取得する。LGDと世界首位を競った時期もあるサムスンは液晶から撤退する。

中国勢の台頭で液晶は急速にコモディティー(汎用品)化し「コストを含めもう勝てない」(サプライヤー幹部)状況だ。LGDも韓国での生産を止めるなど事業規模を大幅に縮小する。

BOEとCSOT以外のメーカーも含めた中国勢の生産能力ベースのシェアは2022年に約70%と、19年比で20ポイント上昇する見通しだ。

液晶メーカー全体の生産能力は、テレビやスマートフォンの需要増に伴い拡大一辺倒だった。特に中国では主に地方政府が多額の補助金などで投資を支援してきた結果、工場は20カ所を超える。

調査会社の米DSCCによると、世界全体の液晶生産能力は21年に初めて減少に転じる。中国勢が投資を抑制する影響が大きい。工業情報化省の電子情報部門トップは供給過剰を懸念し、補助金の対象を液晶から有機ELに切り替えるよう、地方政府に数年前から呼びかけていた。これが浸透してきた格好だ。

BOEは新工場建設の凍結を表明している。新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ経済を立て直す一環で、湖北省武漢市や陝西省咸陽市では他のメーカーによる新工場建設や増産計画があるが、22~23年にほぼ完了する。その時点で液晶パネルの生産能力は頭打ちとなる見通しだ。

新型コロナの感染拡大に伴う外出自粛によってテレビやパソコンの需要が急増したため、今年に入って液晶パネルの需給は急速に改善した。足元の価格は年初に比べて2~3割高い。この結果、LGDや台湾友達光電(AUO)など赤字続きだった液晶パネルメーカーが7~9月期に相次いで黒字転換を果たした。

価格安定はしばらく続くとの見方が多い。パネル供給能力の伸びが鈍化する一方で、テレビの世界需要は伸び続けるとの分析だ。DSCCの田村喜男アジア代表は「韓国勢の縮小によって中台メーカーが残存者利益を得る段階に入りつつある」と分析する。

1990年代にシャープなど日本勢が市場を開いた液晶パネル産業は、00年代に韓国と台湾メーカーが果敢な増産投資を仕掛けて主導権を奪った。10年代になると政府の補助金を受けた中国勢が台頭してきた。この数年は他国の大手を事実上、淘汰して、寡占が一気に進むプロセスにある。鉄鋼や太陽光パネル、セメントなど、他の産業がたどった道を液晶も歩み始めている。

韓国のパネルメーカーは有機ELなど「液晶の次」への投資を急ぐ。成功体験となっているのがスマートフォン用だ。サムスン電子が自社製のスマホへの搭載をテコに有機EL市場を創出。米アップルもこのほど発表した基幹スマホはすべて有機ELを採用した。LGディスプレーも液晶から有機ELにシフトし、アップル製品の一部の供給を担っている。

サムスンはさらなる用途開発を進める。ガラス基板なしで作れるためパネルを折り曲げやすいという有機ELの特長を生かし、つなぎ目なしで2つに折り畳めるスマホの機種を増やしている。

一方、テレビ向けの大型パネルはまだ取り組みの途上にある。LGDが有機ELを商用化し、LG電子のほかソニーなどのテレビにも供給しているが、テレビ市場に占める有機ELの比率はまだ2%に満たないままだ。液晶に比べて価格が大幅に高く「液晶で十分」と考える消費者が多い。

サムスンは「QD(量子ドット)」と呼ぶ電子材料を用いた新型有機ELパネルの量産に1兆円超を投じる計画を表明しているが、製品発表には至っていない。

足元では中国勢も有機ELへの投資を増やしている。液晶で得た「残存者利益」も使って開発を急ぐとみられる。韓国勢は技術革新を先導し続けられるかが問われる。

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