sharp apple 052021000000-3シャープの業績が上向いている。2022年3月期の連結純利益は前期比43%増の760億円を見込む。けん引役の一つが液晶ディスプレー事業だ。ジャパンディスプレイ(JDI)の白山工場(石川県白山市)を買収し、米アップルとの関係をより深めたことが奏功する。ただ、iPhoneは表示パネルが有機ELにシフトするなど環境の変化は著しい。液晶好調の持続力がどこまで続くのかに焦点は移っている。

「ディスプレーの回復が大きく出てくる」。シャープの野村勝明社長は11日、22年3月期の業績見通しについてこう話した。21年3月期の実績では純利益が前の期と比べて3.9倍の532億円と大幅に増えた。今期もその傾向は続く見込みだ。





液晶ディスプレー市場全体では見通しは明るい。米調査会社DSCCによると、21年は1120億㌦と20年から33%拡大する見通しだ。過去まれにみる急拡大だが、この成長を支えるのはテレビ向けの大型ディスプレー。世界的にテレビの需要が旺盛なことに加え、液晶パネルを制御する「ドライバーIC(集積回路)」など部材の供給がタイトになりパネル価格が上昇傾向にあることも要因だ。

テレビ向け大型ディスプレーに強いのは京東方科技集団(BOE)や華星光電(CSOT)など中国勢、そして友達光電(AUO)といった台湾勢だ。中小型ディスプレー中心のシャープにとって恩恵が少ないようにもみえる。

だがそう単純でもない。タブレット端末やノートパソコン向けでも一定の強い販路を持っているためだ。DSCCの田村喜男アジア代表は「IT(情報技術)機器向けは価格上昇カーブが強くなっている。数カ月はこの傾向が続きそうだ」と指摘する。

こうしたIT機器に加え、今期業績に寄与しそうなのがアップルのiPhone向けだ。みずほ証券の試算によれば、シャープのiPhone向け液晶ディスプレー供給は21年に5000万枚と20年から11%増える見通し。

大きな要因は白山工場の買収だ。20年には経営不振のJDIからアップルへの前受け金債務の一部、3億9000万ドル(約420億円)を引き継ぐ形で白山工場の土地・建物を取得。21年2月から再稼働を始めた。韓国LGディスプレー(LGD)やJDIが大きく数量を落とす半面、シャープはメインサプライヤーとして残存者利益を得る形だ。

DSCCによると、シャープの中小型液晶ディスプレーは20年に10.4%の世界シェアだった。BOEや中国の天馬微電子と比べるとシェアは小さいものの、アップルを主要顧客に持つことがシャープの強みといえる。

ただ、追い風は長くは続かない可能性がある。iPhoneも廉価モデルでは液晶を採用しているが、上位モデルから有機ELへの転換を進めている。スマホ向けの有機ELディスプレーは韓国サムスン電子の独壇場で、シャープの存在感は薄い。市場では「白山工場のiPhone向け生産のピークは21年4~6月期とみている」(大和証券の栄哲史アナリスト)との見方もある。

アップルとの関係強化は短期的にはプラスに動いているが、中長期的には残存者利益をどこまで享受できるかは不透明だ。シャープは市況の影響を受けやすい液晶パネル事業を分社化し、他社からの出資などで資金を調達しやすくした。

「シャープブランドの向上を目指す」。野村社長は記者会見で強調した。目先では自己資本比率の改善やフリーキャッシュフロー(純現金収支)の黒字化といった経営改善効果が出てきた。アップル向けの「黒子」として稼いだキャッシュをどう活用して次の成長につなげるのか。今期は将来に向けて自社のブランド力を高める製品の仕込みをどこまでできるか注目される。

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