中国で深刻な電力不足が起きている。当局が環境対策として石炭を主燃料とする火力発電所の発電抑制に動いたことが要因で、同国メディアは全国の約3分の2の地域で電力供給を制限したと報じた。米アップルや米テスラ向け部品を生産しているとされる工場が操業を停止し、日系企業にも影響が出始めている。

上海市のメディアによると、電力不足が起きているのは20省・自治区・直轄市。このうち、江蘇省では今月下旬から、1000社を超える企業が工場を2日稼働した後に2日停止しているという。同省にはスマートフォンや電気自動車(EV)などの工場が多い。

また自動車や家電メーカーが集積する南部・広東省でも企業向けの電力制限を開始。東北の黒竜江省や吉林省、遼寧省では工場だけでなく、市民生活にも影響が及ぶ。





この影響で、アップルやテスラに部品を供給しているとされる台湾の乙盛精密工業は26日、江蘇省の子会社が30日まで操業を停止すると発表した。アップル向けの半導体関連部品を手掛けているとされる別の台湾企業、日月光半導体製造の子会社も27日までに、同省の工場を30日まで停止すると明らかにした。

影響は日本企業にも出ている。広東省広州市内に工場を持つブレーキ部品大手の曙ブレーキ工業では平日の一部稼働を止め、土日に稼働日を振り替えて生産している。スタンレー電気の広州と天津市にある自動車ランプ工場でも稼働に一部影響が出たが、「必要な供給量は確保できている」。

このほか、中堅中小規模の自動車部品や食品関連企業などでも夜間操業を強いられるケースも出ている。日本貿易振興機構(ジェトロ)広州事務所によると、現地の180社以上の日系企業が電力制限の影響を受け、早期解決を求めている。

中国で電力不足が起きたのは、習近平(シー・ジンピン)国家主席が掲げた「2030年までに二酸化炭素の排出量をピークアウトさせ、60年までに実質ゼロにする」との目標実現に向けて、地方政府が達成に向けて懸命になったためだ。

多くの地方政府はこれまで、新型コロナウイルス禍で低迷した地域経済の立て直しを優先してきた。ただ習指導部が一転して排出量抑制にカジを切ったことから、環境対策の強化に動いた。

この結果、火力発電所が発電抑制に追い込まれた。火力発電は中国の発電量全体の7割近くを占めるだけに、電力不足が深刻さを増した。石炭価格が1年前に比べ3割以上も上昇したことも稼働率の低下につながったようだ。