自動車やアルミニウムの添加剤に使うマグネシウムの国際価格が急騰し、前月比で約2倍に跳ね上がっている。世界シェアの約8割を占める中国で脱炭素対応による電力供給制限が拡大し、主要産地のマグネシウム工場の一部が操業停止に追い込まれて相場が押し上げられた。当局が石炭火力の発電抑制を強化しており、生産制約は年末まで続く見通し。マグネシウム輸入のほぼ全量を中国に頼る日本の調達にも支障が生じるとみられ、警戒感が高まっている。

国際指標となる中国のマグネシウム地金の輸出価格は直近で、少量の取引ながらトン当たり7500-8500ドル近辺をつけた。年初比で3・5倍高く、8月下旬比でも約2倍高い。脱炭素化に力を入れる中国では夏場以降、エネルギー消費の削減目標の達成に向けて当局が精錬所の電力使用を制限してきたが、足元では規制が一段と強化されて上昇に拍車がかかった。





国際マグネシウム協会(IMA)によれば、中国陝西省楡林市が9月15日に、市内のマグネシウム精錬所に対し年末まで生産量を50%削減するよう命じた。同市は中国のマグネシウム生産の約6割を占め、40以上ある精錬所のうち15カ所では操業停止の必要があるという。IMAのリック・マッカリー会長は「生産制限と価格上昇が業界成長に短期的に与える影響を非常に懸念している」とコメントを発表した。

マグネシウムは、アルミ強度を高める添加剤のほか、軽量な特性を生かして車載部品やパソコンの筐体(きょうたい)にも使われる。需要は中国が約4割、北米と欧州が約2割ずつを占め、日本は5%程度とシェアは低いが輸入の約99%を中国から調達。市中では「当局の命令が撤回されない限り、中国からマグネシウムが出てこない」(非鉄金属商社タックトレーディングの上島隆社長)と警戒する声がある。

石炭火力への依存度が高い中国では、陝西省以外でも電力供給が制限され、製造業に影響が広がっている。非鉄金属では、雲南省で半導体や樹脂製品の原料となる金属シリコンの生産に支障が生じ、アルミの添加剤に使う規格「553」の気配値は前月比で約3倍高いトン当たり1万ドルを超えた。金属シリコンの供給は中国シェアが7割近くを占める。

中国政府は、2030年までに二酸化炭素(CO2)排出量をピークアウトさせる目標などを掲げている。21年6月には、エネルギー消費の削減目標に未達の約3分の2の地域に対策強化を指示しており、当面は目標達成の動向などが注視される。

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