テレビの主要部材である液晶パネル価格が大幅に下落した。指標品の9月の大口取引価格は前月比3割ほど安く「過去最大級の下落率」(国内証券アナリスト)となった。米中で景気の先行き不安が広がり、年末商戦を前に需要家側に安値志向が強まっている。巣ごもり消費の一巡も相まって、テレビ販売の落ち込みが鮮明となってきた。一方でパネルメーカーに本格減産の動きはなく、年明けには採算割れの水準まで値下がりする可能性がある。

中国や韓国、台湾のパネルメーカーと、国内外のテレビメーカーの間で決着した9月の大口取引価格は、指標となるオープンセル(バックライトがついていない半製品)の32型品が1枚55ドル前後。8月に比べて20ドル(27%)ほど安い。直近ピークの6月からは4割ほど下落した。大型の55型品も同14%(29ドル)安の181ドル前後となった。





「そんな高い価格は受け入れられない。値下げしなければ調達量を半分にする」――。需要家のテレビメーカー側からはパネルメーカーに強気の姿勢が目立った。米調査会社DSCCの田村喜男アジア代表は「春ごろからテレビメーカーの在庫は積み上がり始めていた。夏に入りパネル調達を絞ったことで、供給過剰が鮮明になった」と指摘する。

液晶パネルの主な需要地である米中の景気不安から、テレビの需要に減速感が広がっている。米調査会社コンファレンス・ボードによると、9月の米消費者信頼感指数は109.3(1985年=100)と前月の改定値から5.9ポイント低下した。同社のリン・フランコシニアディレクターは「住宅、自動車、白物家電への支出意欲が再び後退した」と指摘。「消費者は慎重になっており、今後支出を切り詰める可能性が高い」と強調した。

中国のテレビの需要減速も鮮明だ。中国国家統計局が発表した9月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は好不況の節目である50を割り込んだ。中国ではテレビの販売価格を液晶パネル市況と連動させることが多い。液晶パネル価格はこの1年で2倍ほどに上昇しており、テレビ価格の上昇が消費者心理を冷やしている。

液晶パネル生産大国の中国で特にテレビメーカーの調達が弱まり、「全体の価格をより引き下げている」(国内証券アナリスト)。需要期である年末商戦向けのパネル調達に間に合うよう「早めに価格を引き下げたい」というテレビメーカー側の思惑も働く。

これまで液晶パネル市場を支えた新型コロナウイルス禍に伴う巣ごもり需要も一巡している。DSCCと中国DiScienによると、7~9月の世界の液晶テレビ出荷台数はコロナ禍前の19年7~9月に比べ7%減ったもようだ。

日本も同様だ。電子情報技術産業協会(JEITA)によると、8月の薄型テレビ全体の国内出荷台数は前年同期比28.9%減った。20年4月から前年超えが続いたが、21年7月から前年水準を割り込んだ。「期待していた五輪需要がそこまで盛り上がらなかった」(テレビメーカー)こともあり、中小型品を中心に減速が目立つ。

供給面では、需要を上回る生産が続く。足元の液晶パネル価格はパネルメーカーの採算割れまでには至っておらず「シェア確保の動きから供給過剰が解消されるほどの本格減産の動きは出ていない」(国内証券アナリスト)。

来年にかけて値下がりは続きそうで「22年1~3月期にはキャッシュコスト(現金で支払う製造費用)割れの水準になりそうだ」(田村氏)との声も出始めた。

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