IoT(モノのインターネット)や次世代移動通信システムの進展に伴い、需要が大きく増加している半導体業界。国内では、大型設備投資案件が相次いでいる。
ジャパンマテリアル(本社三重県菰野町)は、半導体・液晶製造に不可欠な特殊ガスや薬液、超純水の供給から、製造装置の保守・メンテナンスまで展開、最先端の製造現場を支えている。

「日本半導体の復活へ、黒子として貢献したい」と強調する田中久男社長に現況や将来展望について聞いた。





―キオクシアの四日市工場の第7製造棟建設、北上工場(岩手県北上市)の拡張など、半導体大手の設備投資が相次いでいる。
「数年先まで、当社の登るべき稜線(りょうせん)がはっきり見えてきた。キオクシアの2工場だけでもものすごいボリュームになる。かなり高い角度になりそうだ。特殊ガスの配管施工などイニシャル部門から、稼働後には工場の運営管理や製造装置の保守・メンテなどオペレーション部門が伸びてくる。それに合わせて、エンジニアの数を充実しなければならない。北上事業所は、増設に加え、新たな土地を取得して新棟の建設も検討している」

「一方で、半導体製造に携わるエンジニアが圧倒的に不足しており、争奪戦が激しくなっている。これに対し、当社は自社育成で対応していく。本社工場には、半導体製造装置の実機を備え、実技研修ができるトレーニングルームを備えている。11月末には本社工場に隣接して実習・研修スペースを備えた新棟が完成し、研修態勢がさらに充実する。最低でも年200人ペースでエンジニアの育成を目指す」

―ベトナム人エンジニアの採用に積極的だ。
「現在、50人が活躍している。皆礼儀正しく、素直。日本人よりも技術を身に付けようという意欲が強いくらいだ。ベトナム人は、個人主義に走らず、周囲に気を遣い、みんなで助け合う文化など、日本人との共通点が多い。今後も、日本人社員と全く同じ待遇で、年間20~30人を継続して採用していきたい」

―事業領域が広がってきた。
「製造装置の保守・メンテの売り上げが伸びてきた。国内に加え、10カ月前からは台湾の台湾積体電路製造(TSMC)の工場にエンジニアの派遣を始めた。2人からスタートし、現在20数人まで増員した。まだ足りないと言われており、今後さらに増えそうだ」

「生産能力増強のための製造装置の改良も受注するようになった。装置価格が高騰し、新たに購入するのではなく、改良することで対応しようという動きが背景にある。本社工場に専用ルームを設置し、これまでにテストで二つの装置を手掛けた。装置メーカーに近いポジションになってきている」

「また、国内には中小規模の半導体工場が60近くあるが、半導体不足で急に生産数量が拡大し、各工場とも人手不足や製造装置の維持に苦慮している。当社は最近、国内の中規模工場の守衛から特殊ガスや薬液の運転管理、製造装置の保守・メンテまでを一括受注した。今後、こうした動きが広がっていくだろうし、生産ラインも含め工場の運営までを受託する流れになっていくのではないか」

―2030年に目指す企業像は。
「今年は、株式を上場してから10年の節目を迎える。おかげさまで業績は順調に推移し、経常利益は6倍強に伸び、グループ従業員は上場時の360人から今は1300人まで拡大した。さらに10年後となる2030年には、言葉で表現すれば、ものすごく優しく、強く、社員とその家族が誇れる会社にしたい」

「従業員には、手当を含め、いろいろな面で優しくする。例えば、少子化対策だったら、4人目の出生祝いには1人500万円を出す、とかあってもいい。それを実行していくためには利益を出し続けていく必要がある。現在の半導体・液晶のサポート業務を基軸にして、さらなる事業領域の拡大と、イメージアップにつながるような新規事業を一つか二つ必ず確立しておきたい」

「当社は、デジタルサイネージやそのコンテンツ制作を手掛けるグラフィックスソリューション事業もある。全国の小売り店舗に導入されたり、テレビ番組にも採用されており、今後、面白い展開が期待できそうだ。新規事業は、社会課題に対応し、三重県発で全国に広がっていくようなものに挑戦していきたい」

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