中国のスマートフォン大手OPPO(オッポ)は設立以来17年間、地道に業績を伸ばし、従業員3万人近くを抱える大企業に成長した。そして現在、さらなる成長への大きな一歩として、上場に向けた動きを見せている。

OPPOは10月25日午前5時44分、イントラネット「Hio」で給与制度の改革に関する社内文書を発表した。数年間にわたって運用してきた給与制度を変更し、自社株を給与の一部として付与する株式報酬制度を導入するという内容だ。中堅以上の社員(社員等級16級以上)の場合、株式が給与の重要な部分を占めることになるという。





OPPOは未上場であるにもかかわらず、内部には社員たちが「ブラックマーケット」と呼ぶ自社株売買システムが存在し続けてきた。複数の社員がその手続きについて説明してくれた。まず、SNSアプリ「QQ」に開設されたグループに株式売却希望のメッセージを投稿し、購入希望者と価格交渉を進める。売却価格が決定したら、OPPOを傘下に置く電子機器大手「歩歩高(BBK)」本社の財務部門に売買手続きの処理を依頼する流れだという。

OPPOからは現時点で上場についての発表はされていない。OPPOに事実確認をしたが、回答は得られなかった。しかし、さまざまな事実が、同社が上場準備中であることを示している。

OPPOの元中堅社員によると、同社は今年初めに監査業務の4大グループ(KPMG、プライスウォーターハウスクーパース、デロイト・トウシュ・トーマツ、アーンスト・アンド・ヤング)から複数の監査人を迎えており、現在は内部コンプライアンスの整備を進めているところだという。

元中堅社員は「OPPO内部の資金の流れや税務処理、株式所有構造は複雑で、コンプライアンスの整備は2~3年かけても終わらない可能性がある」と述べている。現時点では、上場に向けたスケジュールや上場先の決定には至っていないようだ。

複数の情報筋からの話をまとめると、歩歩高の創業者である段永平氏が先ごろ長年暮らした米国から帰国したことも、OPPOの上場計画と関係しているとみられる。

■ OPPOがいま上場を目指す理由
OPPOがスマホ大手として押しも押されもせぬ存在となったにもかかわらず、これまで上場を計画してこなかった理由は二つ考えられる。一つ目は、資金が十分にあったこと。二つ目が、複雑に入り組んだ内部の関係だ。

OPPOは設立当初から、地方の販売事業者に支えられて成長してきた。OPPO本社と地方企業および販売店の密接な関係は、ある種の「株式同盟」として現れている。同社は複雑に入り組んだ利害関係を利用して現在の「スマホ帝国」を築き上げた。しかし、その利害関係が上場への道を阻む大きな原因にもなっている。

ある社員によると、OPPOの株式所有構造を見終わった監査人は「よくわかった」という言葉だけを発したという。

OPPOは、スマホ市場の成長が頭打ちになることを見越し、方針を改めることを決定していた。市場調査会社「Canalys」の最新リポートによると、今年第3四半期の世界のスマホ出荷台数は、世界的なチップ不足が響き、前年同期から6%減少した。OPPOは出荷台数で5位に甘んじた。1位から4位は韓国サムスン電子、米アップル、小米(シャオミ)、vivoの順だった。

36Krは、OPPOが電気自動車(EV)事業への参入に向けて動いていることを報じてきた。創業者の陳明永氏とシニアヴァイスプレジデントの劉作虎氏は、EV産業のサプライチェーンやリソースについて調査を進めている。新たな商標「Ocar」の準備も整いつつある。

EV事業参入のストーリーは、資本市場の評価につながる。小米(シャオミ)と百度(バイドゥ)の株価上昇が良い例だろう。一部メディアが今年2月19日に小米のEV事業参入を報じると、同日中に株価が12%上昇し、時価総額は500億香港ドル(7300億円)となった。百度がEV事業参入を発表した際は、1カ月足らずで米国株式市場における株価が67%上昇し、時価総額は2年ぶりに800億ドル(約9兆1000億円)の大台に乗った。

OPPOによるチップの独自開発も進んでいる。現在は、子会社の「哲庫科技(ZEKU)」が中心となってスマホ向けSoCの開発を急いでいる。海外メディアによると、OPPOは2023年または24年に、半導体受託生産の世界最大手「台湾積体電路製造(TSMC)」の3nmプロセスを採用したCPUをリリースする可能性もある。

EV事業もチップ製造事業も、OPPOの新たなストーリーを支える新事業であることは間違いないが、いずれも莫大な投資が必要になる。スマホ事業の収益だけでこれらの事業を支えるのは不可能だ。OPPOが上場にかじを切るすれば、これが理由だろう。

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