中国の新興パネルメーカーの柔宇科技(ロヨル)が、資金ショートで窮地に陥っていることが明らかになった。財新記者の取材に応じた複数の従業員によれば、同社は支給が遅れていた10月分の賃金を11月30日に支払うことを約束していたが、結局履行できなかった。

同日午後、柔宇科技のCEO(最高経営責任者)を務める劉自鴻氏は会議を招集し、会社の資金繰りの状況を全社員に向けて説明した。前出の従業員らによれば、劉氏は「資金調達を進めており、12月末または来年1月には賃金を支給する。ただし確約はできない」と述べたという。

財新の取材によれば、柔宇科技の資金繰りは以前から綱渡りが続いていた。1年近く前から従業員が立て替えた経費の支払いがしばしば遅れていたほか、2021年前半には一部の上級管理職への賃金支給が滞った。





財新記者は賃金遅配の事実関係や資金調達の詳細について柔宇科技に問い合わせたが、12月8日までの時点で回答は得られなかった。

2012年創業の柔宇科技は、画面を曲面にしたり折り曲げたりできるフレキシブル有機ELパネルの独自開発で注目を集めた。だが、同社の技術力に対しては業界内から疑問の声も上がっていた。柔宇科技は「非主流」の独自技術を用いることで、フレキシブルパネルの製造コスト低減と歩留まり改善を実現したと自称していた。しかし歩留率などの具体的な数字を公表せず、同社製のパネルの普及も一向に進まなかったからだ。

柔宇科技は2020年12月31日、上海証券取引所のハイテク企業向け新市場「科創板」への上場を申請。IPO(新規株式公開)を通じて144億元(約2568億円)を調達するもくろみだった。ところが40日後の2021年2月9日、上場申請を自ら取り下げた。このことは、柔宇科技の上場計画が投資家や証券監督当局の十分な信頼を得られなかった可能性を示唆する。

当時提出されたIPOの目論見書によれば、柔宇科技の経営は赤字続きで、純損失は2017年が3億6000万元(約64億円)、2018年が8億元(約143億円)、2019年は10億7000万元(約191億円)と年を追うごとに膨張していた。

その理由について同社は、自社製のフレキシブルパネルはまだ市場開拓の段階にあり、その一方で研究開発に大量の投資が必要なためだと釈明していた。

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