ディスプレイ材料メーカーの間で「協業」という言葉をよく耳にする。有機ELパネルをリードする韓国では、現地メーカーの材料を採用するケースが強まっており、日本勢は現地メーカーとの協業を通じ、打開を図りたい思惑があるようだ。
一方、液晶パネルの覇権を握る中国。液晶のディスプレイ材料は汎用化が進んでおり、日系メーカーは協業で設備負担を軽くし、現地化を進める狙いがある。両国で共通するのは、自国優先でサプライチェーンを構築する動き。事業戦略の上で“国籍”を考える時代になりつつある。

 半導体のサプライチェーンを自国内に築こうと各国が躍起だ。ただ半導体材料は日系メーカーの存在感が高く、フォトレジストの先端材料などは日本勢が市場を握っている状況だ。





 翻ってディスプレイ業界。有機ELパネルは中小型で高シェアを握る韓国サムスンディスプレイ、大型は韓国LGディスプレイが1社独占体制を築く。2大メーカーに引っ張られて韓国の有機EL材料メーカーは技術力を高め、日本の材料メーカーと五分の戦いを繰り広げてきた。ただ足元は韓国勢が優勢。日本メーカーいわく「材料のレベルが同程度であれば韓国の材料が採用される傾向にある」。

 こうしたなか、協業でニーズを取り込む日系企業がいくつかある。SFCは保土谷化学工業とサムスンが出資するメーカー。宇部興産は、サムスンと合弁で有機EL基板用ワニスを生産している。2021年4月にはJNCがSKマテリアルズと合弁会社を設立。「材料が良ければ事業が拡大する時代ではない。現地パネルメーカーと結びつく現地メーカーと組み、価値を最大化する」と狙いは明確だ。

 液晶パネルの覇権を握る中国。日東電工は偏光板を、日鉄ケミカル&マテリアルズはブラックレジストを、それぞれ現地メーカーにライセンスしている。三菱ケミカルも現地メーカーと組み、カラーレジストの現地生産に乗り出した。成熟した汎用市場では、技術を売る方が効率的に収益を上げられる。供与するのは最先端の技術ではなく、技術流出のリスクも低い。

 高性能で信頼の厚い日本メーカーの材料を求める世界もある。ただ国籍の意識は明らかに高まっており、合弁で生産している品目は「日本ではなく中国メーカーのブランドで売った方が受けがいい」とも聞く。材料の国産化が進むほど、海外パネルメーカーを相手とする日本勢は不利な立場だ。技術で飛び抜けるか、現地に取り入るか。自社技術を見極め、まずは立ち位置を理解することが重要となる。

※記事の出典元はツイッターで確認できます⇒コチラ