001Omdia中小型ディスプレイ主幹アナリストの早瀬宏氏が中小型ディスプレイの最新市場動向を解説した。以下に要点を示す。

米国の制裁を受けスマートフォン(スマホ)市場から後退を余儀なくされたHuaweiに対し、一気に攻勢を強めた中国スマホメーカーによって「ポストHuawei」特需で明けた2021年の中小型FPD市場は、「半導体の供給律速」を受けながらも、年後半コロナウイルス感染の沈静化によって「ポストコロナ」の需要回復の期待が高まった。





携帯電話用FPD市場では、Huaweiが失うシェアを狙う競合の中国携帯電話ブランドが積極的にFPDを調達する動きに出る中、並行してドライバ ICの供給不足の懸念が高まったことからFPDの買いが加速、2021年FPD出荷が第1四半期にピークとなる異例な状況となった。

異例な動きを見せる中でもAMOLEDの出荷は年後半に向かって着実に出荷を伸ばした。中でもフレキシブルAMOLEDはLTPO技術を応用し低消費電力の特性を向上、ポストコロナに向けた5G対応のスマートフォン上位機種の需要を獲得し、2021年の中小型FPD市場の出荷数量・金額両面の成長を牽引した。

一方、a-Si TFT LCDはポストHuawei、ポストコロナ両面で需要の伸びを獲得した。中でも車載モニタ市場では画面サイズの大型化が進み出荷金額を底支えしている。ただし、携帯電話市場での第1四半期の「積極買い」の反動によって、2022年に向けて厳しめの調整局面となる可能性が懸念される。
LTPS TFT LCDは、AMOLEDに需要を侵食されると共に携帯電話向けではセル出荷が増えた事でモジュール組み立ての付加価値を削がれ、2021年は出荷数量・金額共に減少する厳しい状況を迎えている。

2021年、ポストHuawei市場で大きく揺れた携帯電話用FPD市場は、今後フレキシブルAMOLEDが市場を牽引していく可能性が高い。引き続き付加価値向上を進める中で、スマートフォン需要の伸びを享受していくと見込まれる。AMOLEDの量産技術に先行したSamsungが依然高いシェアを有しているが、競合メーカーが徐々に実力を上げる中、今後どの様なシェア争いを繰り広げていくかが注目される。

一方TFT LCDは、車載モニタを中心に携帯電話以外の市場で成長を目指すべき局面を迎えた。大画面化と高精細化に向かう車載モニタ市場に於いて、中長期的にLTPS TFT LCDが需要と付加価値を獲得する余地は残されていると期待される。
2021年後半、コロナウイルス感染拡大が沈静化に向かうことで、ポストコロナ市場に向け携帯電話や自動車を中心に中小型FPD需要の本格的な回復を期待できる状況となった。しかしながら、2022年1月時点で新たに感染が急拡大した「オミクロン株」が今後の先行きを再び不透明にしている。「ポストコロナ」が遠のく可能性が懸念される中、まずは感染防止に再び心がけ、広くFPD市場に関わる状況変化に注意を払うべき状況が続くだろう。

車載モニタ用FPDの動向 - JDIが2位確保
2021年の車載モニタ用FPD出荷数量は、前年比26%増加した。車載モニタ用FPDメーカーでは中Tianmaがトップ、ジャパンディスプレイ(JDI)が2位だが、3位中BOEが出荷を伸ばし上位2社に迫る。ただし、4位以下もシェアは拮抗しFPD供給元も分散化の傾向が強まっている。納入先では首位のContinentalがシェアを下げる一方、2位以下のメーカーは僅差で並び、Tier 1メーカーの分散化が続く。

Omdia シニア調査マネージャーのYS Chung氏がTVやPC/タブレット/モニタなどITけデイスプレイ向け大型パネルの最新動向を解説した。

2021年に大型ディスプレイは、面積ベースで前年比5%増、数量ベースでは同10%増となった。面積ベースでは、PC向け出荷の同26%増をはじめすべてのカテゴリで増加した。2020年に同65%増と急成長したタブレットは、遠隔学習が一段落した2021年には同5%増へと戻った。数量ベースでは、TV向けのみ同3%減と2020年同様にマイナス成長を続けている。国・地域別大型パネル出荷シェア(面積ベース)は、中国が54%と過半を占め、台湾21%、韓国17.5%、日本7%と続く。企業別では、世界最大のFPDメーカーの中BOEがトップシェアで、中China Star、韓LG Displayが続く。