インドが半導体、ディスプレイの生産開始へ前進している。政府による工場建設の助成事業に5社が応募した。半導体不足が多くの製造業のボトルネックとなっている。サプライチェーンの複線化はコロナ禍の教訓でもある。インド以上に、中国に続く「世界の工場」たる資格を備えた国はない。日本企業は動向を見守るのではなく、インドの果敢な挑戦に加わることで、果実を享受するべきだ。

 同国は「自立したインド」のスローガンの下、国産化政策を強力に推し進めている。その一環として昨年12月、半導体、ディスプレイの国産化に向けた新たな助成制度を導入した。シリコン半導体、ディスプレイ、化合物半導体、シリコンフォトニクス、センサーの生産、半導体パッケージング、半導体設計を行う企業やコンソーシアムに、費用の最大50%を助成する。





予算規模は7600億ルピー(約1兆2000億円)。別途、半導体、ディスプレイ工場の立ち上げに向けて、中央政府と地方政府が連携し、高品質な電力や水など、半導体、ディスプレイ生産に必要な環境を整備するという。

 シリコン半導体工場の助成には、インドの鉱物資源最大手であるベダンタが台湾の鴻海精密工業と設立した合弁企業のほか、半導体分野を強みとするシンガポールの投資会社IGSSベンチャー、アブダビの投資ファンドが率いるISMCが申請した。厚さ28~65ナノメートルの半導体を合わせて月12万枚生産する計画。136億ドルの投資が想定されており、中央政府に56億ドルの支援を求めている。

 ディスプレイ工場ではベダンタと現地企業のエレストの2社が申請した。計67億ドルの投資が見込まれ、27億ドルの補助を求めている。スマートフォンなどに利用される8・6世代TFT液晶やアクティブマトリクス式有機ELの生産も提案されている。

 インドの半導体市場は2020年に約150億ドル規模に達しており、26年までに約630億ドルに達すると推定されている。ディスプレイパネル市場は現在約70億ドル。25年までに約150億ドルに成長すると予想されている。

 アジアで半導体を前工程から生産しているのは日本、台湾、韓国、シンガポール、マレーシア、中国しかない。そこに連なるのはインドにとって決して生やさしいことではないだろう。しかし近い将来に人口で中国を抜く大きな市場を持ち、米国の大手IT企業の幹部となるほどの優秀な人材を輩出する土壌がある。スタートアップ企業のエコシステムまであるこの国で、いずれ半導体産業が立ち上がることは間違いない。

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