今月8日の日経新聞に「サムスン、ロシアで板挟み」と題する記事があった。韓国最大の企業のサムスン電子がロシア事業をめぐって苦悩しているという内容だ。

サムスン電子はスマートフォンや薄型テレビ、NAND型フラッシュメモリなどの世界シェア第1位。ロシアについてもスマホのシェアは約30%でトップ。かの地に行くと、テレビはほとんどがサムスン製だ。

ロシアのウクライナ侵攻を受け、アップルやテスラ、ナイキ、マクドナルドなどのグローバル企業がロシアへの経済制裁に同調してボイコットをしている中、サムスン電子やLG電子、現代自動車などの韓国企業はまだ公式のボイコット宣言はしていない。






サムスン電子は3月上旬にロシアへの製品輸出を停止したものの、この理由として、ロシア行きの海上物流に支障が生じて船積みを中止したことを挙げていた。現在も様子見をして、明確な態度を示していない。

ロシア市場から撤退すると、中国勢に市場を奪われるとの懸念が強いからだ。実際、サムスン電子がロシア向けの船積みを中止したところ、中国のファーウェイ、OPPOなどのスマホの販売台数がロシアで倍増した。

欧米勢から「キミたちはロシアから撤退しないの?」と圧力をかけられても、サムスンは「そんなこと言われたって、引くに引けないんですよ」と言い訳している状況。家電やスマホの撤退は「死んでも嫌だ」とかたくなになっている感じもする。


ロシア事業に対する姿勢として、撤退する企業、一時停止する企業、縮小する企業、新規投資をしない企業、撤退縮小はしない企業…などがある。欧州でも、フランスの流通業大手オーシャンは撤退しない模様だ。ロシアに230のスーパーマーケットの店舗を持ち、ロシアでの売上高は世界全体の10%超を占めているからだ。

また、モスクワ近郊を中心に93の店があるドイツの流通大手のメトロも、「ロシアのウクライナの攻撃を非難する」と声明を出したものの、「多くの人が当社から食料品を購入している」などと運営の継続を伝えている。グループ全体の約10%を占めるロシアは重要な収益源だ。中国やインドの企業は撤退について知らん顔をしている。

ロシアからの撤退には巨額の損失も伴う。英国の石油大手シェルは、ロシアからの事業撤退に損失を2022年1~3月期に最大50億ドル(約6200億円)規模の減損損失を計上する。「脱ロシア」のコストは経営を圧迫する要因にもなっている。

シェルはロシア国営天然ガス独占企業のガスプロムや日本の三井物産などと進めてきたサハリン沖の液化天然ガス開発事業「サハリン2」から撤退をした。また、米国のエクソンモービルが撤退した「サハリン1」には経済産業省のほか伊藤忠商事、丸紅などが出資している。

日本企業も液化天然ガス開発事業からの撤退はなかなか決断できない。岸田文雄首相は日本のエネルギー安全保障にとって重要なプロジェクトであることを理由に、「サハリン1、2から撤退しない」と明言した。日本が退いたら「待ってました」と中国が入ってくる恐れもある。苦悩しているのは韓国だけではない。

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