JSR Johnson── 4月に祖業である合成ゴム事業を売却しました。その狙いは。

 ジョンソン 非常に潜在力のある事業ではありますが、核として成長させていきたい事業と戦略が一致していませんでした。当社として重要なところに取り組む一方で、合成ゴム事業は人や資金などの資源をかけてもらえる組織に手掛けてもらい、互いに長期的に成長できるようにしたかったのです。何十社という会社とやりとりをした結果、ENEOSホールディングスが最適との結論に至りました。自動車の内装向けなど合成樹脂事業は引き続き手掛けます。

 ── 今後は半導体材料とライフサイエンスをコア事業として成長させる方針です。半導体の事業環境はどうですか。

 ジョンソン 半導体事業は激しいサイクルの中で動いています。この2年間、半導体不足が騒がれ、在庫の積み増しや大型投資も行われました。もしかすると景気悪化により、短期的には市場は下降局面に入っているのかもしれません。





 ただ、私はこの業界に30年以上いますが、今ほどファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が力強かったことはありません。車の自動運転や第5世代(5G)移動通信システム、AI(人工知能)、顔認証など、ハイテク技術の応用の分野で半導体は強く求められています。急激に市場が拡大しており、成長軌道にしっかり乗っていけるように引き続き投資をしていくことが重要です。

── 手掛けている半導体材料の特徴や強みはどこにありますか。

ジョンソン さまざまな工程で当社の半導体材料が使われていますが、中でもより微細な回路配線を可能にする最先端のEUV(極端紫外線)露光向けのフォトレジスト(感光性樹脂)は、特に高い競争力を維持しています。半導体製造では今後、微細化がさらに進み、より高解像度のEUVフォトレジストが必要とされます。そこで有望なのが金属酸化物のフォトレジストです。その技術に強みを持つ米インプリア社を2021年に完全子会社化したのは、最先端の競争力を維持するために必要だと考えたからです。さらに、半導体チップの積層化に使われるCMP材料や洗浄剤は高い技術力が必要で、当社が得意とする製品です。

── 半導体事業には多額の投資が不可欠です。今後の計画は。

ジョンソン 半導体の微細化はいずれ限界を迎え、複数のチップを積み重ねて性能を高める三次元(3D)化が進むでしょう。それに対応する材料も技術革新が必要です。顧客企業により早く、必要な先端材料を提供できるよう技術開発に注力し、生産能力の増強もしていきます。現在は、四日市工場(三重県)の生産能力増強を進めています。

 ◇医薬品受託製造で成長

── ライフサイエンス事業では、CRO(医薬品の開発受託)やCDMO(医薬品の受託製造)を手掛けています。この分野では新規参入も相次いでいますが、競争力をどう発揮しますか。

ジョンソン 半導体と同じビジネスモデルに基づいて進めています。それは技術力や品質で高い価値を達成するということです。当社がCDMO事業に参入したのは15年です。技術力や顧客との結びつきがしっかりしている企業である米KBIバイオファーマを買収しました。(バイオ医療に必要な)たんぱく質を分析する技術を持っており、最先端の治療のためのプロセスに道筋を付けるのを得意としています。KBIの技術により、顧客の新薬候補を次々とつくることができています。

── 現状は売上高の約半分が半導体材料などのデジタルソリューション事業で、合成樹脂事業とライフサイエンス事業が2割台で続いています。この構成比は今後、どう変わるでしょうか。

ジョンソン ライフサイエンス事業は他の事業より早く成長します。この数年で20%程度の成長を見込んでおり、比率は今より拡大するでしょう。半導体材料は市場平均以上である年10%程度の成長を見込んでいます。テレビやスマートフォンの液晶ディスプレーに使われるディスプレー材料事業は5%ほど成長してくれればと思っていますが、経済動向に左右されるため、難しいかもしれません。合成樹脂事業は自動車市場との結びつきが強く、さらに経済動向にも左右されます。

── 中期経営計画の経営目標の進捗(しんちょく)は。

ジョンソン ROE(株主資本利益率)10%以上という目標は前期に達成しましたが、さらに伸ばしたいと思っています。また、デジタルソリューションとライフサイエンスの2事業で、営業利益600億円以上(21年度は437億円)という明確な目標を掲げています。景気の流れがあるのでタイミングは難しいですが、両事業の伸びを考えると24年度までには達成できる見込みです。

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